節目ごとに着物…直弟子1号・歌助が語る歌丸師匠の美学 弟子への惜しみない愛情

[ 2018年7月5日 10:30 ]

(左から)桂歌丸さん、歌助、桂米丸
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 2日に慢性閉塞性肺疾患のため、81歳で他界した落語家の桂歌丸さんの2番弟子、桂歌助(55)が「わが子のように育ててくれた」と思い出を語った。「前座、二つ目のころ私のためにわざわざ着物をこしらえてくれた」と亡き師の優しさに目を潤ませた。

 歌助は、東京理科大学数学科在学中の1985年(昭60)に歌丸さんに入門。高校の数学教師になるつもりが落語にハマり「埋もれた噺(はなし)を掘りおこして高座にかける」という歌丸さんのライフワークに魅せられ、弟子入りを志願した。兄弟子の桂歌春(68)は二代目・桂枝太郎さん死去にともなって歌丸門下に入ったことから、歌助が歌丸さんの“直弟子”第1号だ。

 無口で口下手だった歌助が稽古をしている時に歌丸さんによく言われたのは「見込みがなかったらクビにするよ」。「そう言う時の師匠の目が本気だった」と振り返り「おかげで必死に稽古に励むことができ、ありがたかった」と感謝する。

 節目に師匠がくれた贈り物でも優しさが身に染みた。「私が前座、二つ目になるとき、家に仕立て屋さんを呼んで採寸し、高価な着物をこしらえてくれた」。落語界で、師匠が弟子のためにわざわざ着物をあつらえることは極めてまれなケース。歌助は「いったん師弟関係を結んだら、師匠は惜しみない愛情を持って弟子を育てるもの、という美学があったのだと思います」としみじみと語った。

 歌助は昨夏、自身が55歳という節目を迎える前、弟子からみた師匠の素顔を本にしたいと相談した。歌丸さんは「悪いことだけは書かないでくれよ」と冗談めかしながら出版を快諾してくれ「師匠 歌丸」(イーストプレス)が今月15日に出版されることが決まっていた。最後の高座となった4月、国立演芸場の楽屋で表紙を撮影した時「2人とも近寄ってください」というカメラマンの注文に、歌丸さんは歌助を指さし「こいつと?やだよ」と言うようなしぐさと表情で周囲を笑わせ、カメラに納まった。

 「本が出ることを楽しみにしてくれていたのに」。歌助は天国の師に思いをはせた。

 ◆桂 歌助(かつら・うたすけ)1962年(昭37)9月19日生まれ、新潟県十日町市出身の55歳。東京理科大学在学中の85年に桂歌丸さんに入門。90年に二つ目、99年に真打ちに昇進。00年、時代劇「水戸黄門」に準レギュラー出演。現在は横浜にぎわい座の独演会など年間300席以上の高座を務める。

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