相楽樹主演ドラマ 根本宗子脚本の魅力 会話の妙テレビ的 リアルな口語

[ 2017年3月13日 10:00 ]

テレビ東京「こんにちは、女優の相楽樹です。」の脚本を担当した脚本家・演出家・女優の根本宗子
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 次世代の演劇人として今、最も注目を集める劇作家・演出家の1人で女優の根本宗子(27)が、テレビ東京「こんにちは、女優の相楽樹です。」(月曜深夜1・00)の脚本を手掛けた。女子バトルが展開される会話劇で、真骨頂を発揮。深夜ドラマながらSNS上などで反響を呼んでいる。「YOUは何しに日本へ?」(月曜後6・55)などのバラエティー番組も演出し、今作のプロデュース・監督を務める同局・太田勇氏に根本脚本の魅力を聞いた。

 昨年のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でヒロインの妹・鞠子を好演した女優の相楽樹(22)がドラマ初主演。本人役を演じるセミドキュメント作品で、朝ドラで一躍有名になったと“勘違い”している相楽が主演を務める連続ドラマ「純喫茶と純喫茶、それから」の役作りのため純喫茶を巡り、店員の3人娘にコテンパンにされながらも成長を遂げる姿を描く。

 6日深夜にスタートし、全3話。各回1つ、合計3つの純喫茶を訪れ、それぞれの店に3人娘がいる。第1話の3人娘は、ももいろクローバーZの佐々木彩夏(20)モーニング娘。’17の生田衣梨奈(19)NMB48の藤江れいな(23)が扮し“かわいい”を学んだ。13日深夜の第2話ゲストは壇蜜(36)MEGUMI(35)おのののか(25)。“色気”がテーマになる。

 根本は2009年、19歳の時、劇団『月刊「根本宗子」』を旗揚げ。15年上演の「夏果て幸せの果て」が“演劇界の芥川賞”と呼ばれる第60回岸田國士戯曲賞の最終候補作品に選出。今年2月には「劇団☆新感線」の高田聖子(49)「大人計画」の猫背椿(44)「ナイロン100℃」の新谷真弓(41)ら人気劇団の看板女優が顔を揃えた新作「皆、シンデレラがやりたい。」(東京・本多劇場)を上演し、盛況を呈した。地上波連ドラを手掛けるのは今回が初。

 女子が火花を散らす会話劇の企画に対し、今作の協力プロデューサーのホリプロ・三瓶慶介氏、親交のある放送作家・伊藤正宏氏(フジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!」など)と、太田監督は全く別ルートから根本を推薦された。名前は知っていたものの、作品は未見。昨年9〜10月に上演され、女優・橋本愛(21)の初舞台作になった根本の劇団公演「夢と希望の先」(本多劇場)を初鑑賞。「テンポのいい会話劇とは、まさにこういうこと」と感銘を受け、根本に今作の脚本をオファーした。

 根本脚本の魅力について、太田監督は「ストーリーの流れが分からなくても、どの部分を切り取っても、会話がおもしろい。テレビは話が分からないとザッピングされてしまいますが、根本さんの場合はどこから見てもおもしろいので、途中でチャンネルを合わせてくれた人でも立ち止まってくれると思ったんです。そういう意味で、テレビ的な人。それで今回、お願いしようと思いました」と分析。

 さらに、口語的なのが特徴的。「いわゆるドラマっぽい、日常生活で絶対言わないような文語的なセリフがない。普段、僕らがしている会話に近いので、すごくリアリティーがあると思いました。根本さんは時に人と会話をしながらも台本を書くらしく、アプローチ自体が口語的。だから、おもしろいんだと思います」。例えば、第1話で相楽が純喫茶を前にし「チェーンじゃないってこと?じゃあ純てなんだ…小森純?最近見ないなぁ。結構好きなのになぁ」と独り言。店内で3人娘の1人(佐々木)から「あなた、芸能人でしょ?私、知らないけど。でも、絶対そうだよね。こんなサングラスして入って来ちゃってさぁ」と聞かれた後のモノローグ「なんて大胆な聞き方…あ、これはあれだ。『あ、なんか見たことあるけど、名前知らない。でも、芸能人だからサインもらっとこう』系のやつだ。一番タチが悪い…」。これらのセリフに、太田監督は「文章を書こうとして思いつくセリフじゃないですよね。口語の組み合わせで新しい表現をしていると思います」と絶賛した。

 また、根本が出演者にアテ書きをしたため「普通なら、こなすのが大変な長ゼリフだったんですが、驚くほどNGが少なかったですね」と証言。「ドラマの撮影にはいろいろと方法がありますが、なるべく1カットで場面を長く見せるのと、テイクを重ねて編集でテンポを上げる2パタ―ンで言うと、今回は後者。テイクを重ねる中でも、NGはあまりなかったです。それは根本さんがアテ書きをしたので、役者がセリフを自分の言葉にしやすかったんだと思います。役者全員が撮影を楽しんでいたのが印象的でした」と振り返った。残る2回も“根本節”の炸裂が注目される。

 根本は今春、KAT―TUNの上田竜也(33)が3年ぶりに主演を務める舞台「新世界ロマンオーケストラ」(4月30日〜5月21日、東京グローブ座)の作・演出を担当。今夏には女優として人気劇作家・赤堀雅秋(45)の新作舞台(7月22日〜8月13日、ザ・スズナリ)に出演し、新井浩文(38)荒川良々(43)らと共演。さらに引く手あまたになるのは確実で、テレビ界からのオファーも増えそうだ。

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