躍り出た23歳演出家 加藤拓也氏は「灰皿を投げない蜷川幸雄氏」

[ 2017年1月17日 09:15 ]

加藤拓也氏を前に本番に向けて意気込む(左から)佐々木萌詠、遠藤新菜、荒井萌、宮崎翔太
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 舞台の製作、脚本、演出、キャスティング、宣伝を一人でこなす、劇作家で演出家の加藤拓也氏(23)が注目を集めている。中でも演出は指導が厳しく「灰皿を投げない蜷川幸雄氏」と例えられるほど。若手は活躍が難しいとされる演劇界で、昨年だけで9本を上演しており、今年もさらなる活躍が期待されている。

 昨年12月、舞台「あの子と遊んじゃいけません」で、主演の宮崎翔太(27)は共演者の女優を思いきり平手打ちした。バチッ、ベチンと鈍い音が10発以上、客席に響く。さらにその首根っこをつかみ、顔を水の中に沈めた。加藤氏の演出だ。

 宮崎は「こっちの手も痛くなるほど本気で叩いた。相手の頬は舞台が終わるたびに保冷剤で冷やした」と壮絶さを振り返った。加藤氏とはこの時が4回目のタッグ。その演出について「リアルを徹底的に追求する。役者の気持ちを考えないで、求めるものができるまで何回もやる人」と明かした。

 加藤氏は怒ったり声を荒らげたりすることはないが、淡々と理詰めで、しつこく稽古を重ねる。高校在学中の17歳の時、ラジオ番組の構成作家になろうと各局に企画書を持ち込み、FM局でお笑いタレントのヒロシ(44)の番組を手掛けた。18歳の時にはイタリアに渡り演劇や演出法を勉強。帰国後、舞台製作をするために「劇団た組。」を旗揚げ。思いついたらすぐに行動する性格。舞台の製作から宣伝まであらゆることを一人でこなすようになったのも、行動力があるがゆえだ。同じ劇作家で人気演出家の長塚圭史(41)を尊敬している。

 さっそく今年第1弾の舞台「A、過程について。白いほんとでわたしをあらって、」(23〜25日、東京・原宿駅前ステージ)が控える。昨年以上に引っ張りだこの一年になりそうな異色の若手演出家は「お客さんの想像力をかき立てられるような演出をしていきたい」と意気込んでいる。

 ◆加藤 拓也(かとう・たくや)1993年(平5)12月26日、大阪府生まれ。13年、NON STYLEの石田明が脚本を担当した「弱者の吠えかた」で舞台演出家デビュー。代表作に「博士の愛した数式」「悪の華」など。テレビ番組のプロデュース、演出も手掛けており、テレビ埼玉「ホワッツニュー」なども担当。昨年、広島カープにドラフト1位で入団した右腕とは同姓同名。

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