銭湯のメリットを再認識 単身高齢者の強い味方に

[ 2017年1月17日 09:00 ]

 昨年末、毎週月曜日に社会面で掲載中の「イマドキの仕事人」で、銭湯再生人・平野善之さん(47)を紹介した。経営者がいなくなり閉店していた東京都墨田区の銭湯「松の湯」の経営を引き継ぎ“復活”。当初は1日70人だった利用者数は今では2倍になり、経営も軌道に乗せたスゴ腕の持ち主だ。

 1970年代、東京都内に約2600軒あった銭湯も、今では628軒に減少。ここ1年間だと8日に1軒が廃業に追い込まれている。“昭和の風景”が減るのは寂しい限りだが、現代社会が抱える諸問題に、銭湯が意外とマッチしていることが分かった。

 (1)脱衣所と浴室の温度差が少なく、ヒートショックのリスクが軽減(2)湯につかることで血行が良くなり健康アップ(3)常連なら顔を出さないと周囲が違和感(4)近所付き合いが増える(5)自宅浴室の清掃をしなくて済む――など、特に単身高齢者にとって、強い味方といえそう。

 銭湯のメリットを再認識していたところ、私事であるが正月早々、親類が自宅の浴室で亡くなった。85歳。当日は隣県に出掛けるほど元気で、いつも通り夕食後に入浴。家族が「今日は長湯だな」と感じて風呂場をのぞいたところ、湯船の中で顔が湯につかった状態だったという。

 警視庁の調べでは、東京23区では1年間に、約1400人が入浴中に命を落としているそうだ。想像以上の数で驚いた。

 誰かが一緒に入っていれば、異変にいち早く気がついて、最悪の結果は防げていたかもしれない。そうだ、銭湯には入浴客たちの「見守り機能」も付いている。(記者コラム)

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2017年1月17日のニュース