「カルテット」高橋一生 役作りを超えた演技 坂元脚本で新境地

[ 2017年1月17日 08:00 ]

高橋一生インタビュー(上)

連続ドラマ「カルテット」に出演する高橋一生(C)TBS
Photo By 提供写真

 俳優の高橋一生(36)がTBS「カルテット」(17日スタート、火曜後10・00)にレギュラー出演。長野・軽井沢にある別荘で一冬の共同生活を送り、弦楽四重奏のカルテットを組む30代男女4人の1人に扮する。「東京ラブストーリー」「Mother」などで知られる人間ドラマの名手・坂元裕二氏(49)の脚本に、役作りを“超越”した演技で臨んでいる。中堅きっての実力派の演技論とは――。

 東京のカラオケボックスで偶然出会った4人を演じるのは高橋のほか、松たか子(39)満島ひかり(31)松田龍平(33)と演技派が揃った。前作「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(通称いつ恋、フジテレビ)で社会派の側面も盛り込んだ群像ラブストーリーを紡いだ坂元氏が今回描くのは、恋愛も人生も思うようにいかず、夢破れた4人。人生のピークにたどり着くことなく、緩やかな下り坂の前で立ち止まっている。それぞれが秘密を抱えるサスペンス要素に加え、恋模様やコメディーもある濃密な人間ドラマ。

 高橋が演じるのは、ヴィオラ奏者の家森諭高(ゆたか)。美容室に勤めるが、35歳にしてアルバイトリーダー。理屈っぽく、こだわり満載の一風変わった男。昨年11月のドラマ発表時、高橋は「何より、せっかくこのような4人が集ったので、変に頭の中で役作りをせず、皆さんの出方や現場の雰囲気を見て役に入り込んでいければなと思います」とコメント。役作りについて聞くと「脚本にあることがすべてだと思っています。だから、僕がどういうふうに脚本を受け取ったかをそのまま生かしていこうと」とし、楽器の練習以外は「隠しているわけじゃなく、本当に何もしていないんです。現場の雰囲気で、いかようにでも変わっていくと思っています」と答えた。

 今回の坂本脚本に、その思いを強くしている。坂元作品には日本テレビ「Woman」、フジ「いつ恋」、朗読劇「不帰の初恋、海老名SA」「カラシニコフ不倫海峡」などに出演。「今まで何本かやらせていただいていますが、今回は役に対する固定概念が最初から外れていると思うんですよね。『この人はこういう時、こういうことをする人だ』と脚本を読み進めていけば分かっていた今までの作りが、『この人、一貫性なくない?』ということを、坂元さんは敢えてしている。それが読み取れるので、なおさら僕は役を作るという作業にピリオドを打たないと、この脚本に対応できないということなんです」。高橋が最初に言った「どう脚本を受け取ったか」の結果がこれ。具体的にはどういうことなのか。

 第1話の序盤、4人が夜の食卓を囲み、テンポのいいやり取りが笑いを誘うシーン。諭高が口火を切り「唐揚げにレモンをかけるか」論争が勃発。弁が立つ諭高は論理的に話を展開したかと思いきや、矢先に“矛盾”した言葉を口にする一幕も。坂元氏と直接、話はしていないが「人間って複雑怪奇で、多面的。恐ろしいほど人が変わる“ジャンプ”する瞬間があったり。例えば、今、インタビューを受けて話をしている僕と、マネジャーと話をしている時の僕が違うように、そういう複雑なものが人間でしょ、と。より人間の本質に迫ろうとしている坂元さんの意図を、第1話の脚本を読んだ時に感じたんです。そう提示されている以上、テクニカルな部分どうのこうのということじゃなく、こっちは人間でいるしかない。自分の頭の中で役を作って『諭高はこういう人です』と演じてしまうと、本当に2Dの人になっちゃう。3Dの人にしていくためには、完全に僕の状態のまま、現場にいないといけない。人間性に立体感が出る作り方をしないと、自分が納得できないんです」。坂元氏のハイレベルな“要求”に応えようとしている。

 「脚本家の方と“共犯”にならなくちゃいけないというのは初めてかもしれません。見えない坂元さんとアイコンタクトをして『分かった』と小声で確認し合うような感覚」という演技。「僕の読み取り方が外れていたら『坂元さん、ごめんなさい』なんですが」としながらも、今回の取り組み方は「おもしろいです。坂元さんの脚本という手紙に、お芝居で返事をしていく文通みたい」。わずかな役作りも“排除”した高橋の新境地に期待したい。

続きを表示

2017年1月17日のニュース