ドナルドとシンゾー?猫がいる日常と、ある仮説

[ 2016年11月27日 09:40 ]

鶏胸肉の漬け焼き
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 【笠原然朗の舌先三寸】同居しているのは年の順に、ジュン、シンゾー、ドナルド。たまに顔を見せるのはアンジーとサバイチ。いずれも“ゴッドマザー”で年齢不詳のアンジーを母にもつ異父きょうだいである。

 飼い猫のことだ。

 「ヒラリー」と呼んでいた子猫が、予防接種でオスということがわかり、「ドナルド」に改名。毛の色が“あの人”に似ていなくもない。暴れん坊だが、兄であるシンゾーとは仲がよい。

 猫との同居が始まったのは8年ほど前。猫の額ほど小さな庭に、のちにアンジーと名付けることになる猫が、子どもたちを連れてきたのがきっかけだった。

 それまで「猫はキモチ悪い。何考えているかわからないから…」と言っていた妻が、子猫たちがじゃれ合う姿にメロメロになった。

 どんな動物も(人間もだが…)子どもの頃はかわいい。特に猫は、子猫時代の数カ月が「反則?」と思うぐらいにかわいい。「犬原理主義者」を転向させるのに十分な魅力があったのだろう。

 妻は、せっせと餌を与え始めた。

 「人間の家を支配するためには、自分の魅力をどう人間にアピールすべきか、知っていなくてはなりません。表情、姿勢、しぐさ、顔や体の動き、全部を使って、自分の魅力を輝かせるの」

 米国の作家、ポール・ギャリコの「猫語の教科書」(ちくま文庫、訳・灰島かり)の一節。同作品は、猫が一人称で、「人間をどうしつけるか?」などを語る、という体裁をとる。

 子猫に魅せられた妻と違って、私は母猫・アンジーの魅力に取りつかれた。

 憂いを含んだ青い瞳、聡明そうな表情…猫にしておくのがもったない美猫。決してカラダに触れさせない凜(りん)とした態度もいい。

 こうして猫たちはウチへの出入りを始め、飼っているつもりが、あらゆる場面で「実は猫たちに飼われているのではないか?」と思う日がいまに続いている。

 恋い多きアンジーは、何匹も子どもを産み、育て、そのうちぼんやりしている子たちが“半野良”の飼い猫になった。

 いまいるオス猫はドナルド以外、去勢した。アンジーも避妊手術を受けさせようと捕獲を試みたことがある。だが「どこにこんな力があるの?」というほど野生の力で大暴れ。捕獲はあきらめた。

 好きな動物を挙げて「私は猫派」とか「絶対、犬派だな」などと自称することがある。

 国内でペットフードを製造・販売している企業95社で構成する日本ペットフード協会の調べでは、全国で飼育されている犬は991万7000頭。猫は987万4000匹。11年から犬が減り続けているのに対して、猫は微増。その数が逆転する日も近い。

 ひるがえって人間界を眺めてみる。

 仲間で集まっても皆、黙ってスマホをいじる若者たち、酒の誘いを「予定がありますから…」と断る若手社員、行動がとっても猫的。電車内で化粧をすることの是非について、いろいろ言われているけど、あれは猫的な行動パターンの典型だニャーと思う。

 猫が人間界に進出を試みているのかニャー?昔から犬は化けないけど、猫は化ける。そしてわが家では猫の存在感が日に日に増し続けているのである。ニャーゴ!(専門委員)

 ◎猫のお余りを使って鶏胸肉の漬け焼き

 基本的に猫にはキャットフードを与えているが、“お楽しみ”にたまに鶏の胸肉を生でやる。胸肉はスーパーで100グラム70円ほどと安価。金欠時のタンパク質補給にうってつけ。ということで猫用を少々、拝借。

 (1)鶏胸肉は薄くそぎ切りにする。

 (2)漬けダレを作る。ボウルでダシしょうゆ、コチュジャン、ニンニク、ショウガ、ゴマ油をよく混ぜ合わせる。

 (3)(2)に切った胸肉を投入。よく混ぜ合わせて、ビニール袋に入れ、6時間以上、冷蔵庫で寝かせる。

 (4)魚焼き用のグリルに並べて焼く。小ネギとゴマを散らしてできあがり。

 ※味が濃いので猫には与えないように。

 ◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩きと料理。

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