米団治 亡き父の十八番披露「生きている時はやりにくかった…」

[ 2015年3月23日 07:40 ]

米朝さんの十八番ネタ「鹿政談」を披露した桂米団治

 19日に肺炎のため89歳で死去した上方落語家の桂米朝さんの長男桂米団治(56)が22日、大阪市内の本長寺で「第7回 五代目桂米団治を聴く会」を開き、米朝さんの十八番ネタ「鹿政談」を披露した。

 古典落語の一つで、神の使いとされる奈良の鹿を誤って殺してしまった正直者の男を、奉行が“温情裁き”で不問にする内容。端正な容姿と知的な芸風で、奉行や大旦那役の最高峰だった米朝さんの得意ネタだった。

 米団治は、「米朝の十八番で、舞台袖からいつも見ておりました」と感慨深げに回想。「米朝の奉行は本当にきれいで、右に出る者はいなかった。生きている時はやりにくかったのですが、もういなくなったのでね」と、イタズラ顔を浮かべて客席を沸かせた。

 同寺では米朝さんの師匠、先代米団治が1949年12月に衰退する上方落語の復興を期して落語会を始めた経緯があった。同落語会は08年の五代目襲名を機に再開。檀家(だんか)の1人で、米朝さんと親交が深かった本紙「タイガース川柳」でおなじみのイラストレーター成瀬國晴氏(79)の協力もあった。

 「算段の平兵衛」や「矢橋船」など埋もれた古典を復活させた米朝さん。晩年まで古書に向かい、自宅には段ボール箱数十個分の資料があるという。出番後、米団治は司会を務めた成瀬氏から「米朝さんの(ネタの)遺産はたくさんあるでしょう?」と質問され、「お金の方ですか?」とジョークで対応。24日の通夜祭、25日の合同葬を前に最後まで噺家(はなしか)らしく、落語に生涯をささげた父との別れを笑いに変えた。

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2015年3月23日のニュース