「男はつらいよ」の“おばちゃん”三崎千恵子さん死去

[ 2012年2月15日 06:00 ]

90歳で死去した三崎千恵子さん。「男はつらいよ」のおばちゃん役で人気を博した

 映画「男はつらいよ」シリーズで主人公の寅さんの「おばちゃん」役で親しまれた女優の三崎千恵子(みさき・ちえこ、本名宮阪トシ=みやさか・とし)さんが13日午後7時15分、老衰のため神奈川県鎌倉市の病院で死去した。90歳。東京都出身。今月2日には同映画の山田洋次監督(80)とめい役の倍賞千恵子(70)が見舞ったばかりで、最後のお別れとなった。

 関係者によると、三崎さんは昨年夏ごろから体調を崩して入院。今月初めに危篤となり、山田監督と倍賞が見舞った。会話はできる状態ではなかったものの、倍賞は枕元で、さまざまな思い出などを語りかけた。それから10日余り頑張り続け、娘や孫ら家族にみとられて息を引き取った。

 渥美清さん(96年に68歳で死去)が演じた「フーテンの寅」こと車寅次郎の妹、さくら役で長く“親戚”としての時間を過ごした倍賞は「おばちゃん、よく最後まで頑張りました。ゆっくり休んでください」とコメント。山田監督も「寅さんファミリーの大黒柱ともいうべきおばちゃんを失ってさびしい限りです。どうかファンの皆さんは、スクリーンの上でおばちゃんは永遠に生き続けていると信じてください」と惜しんでいる。

 最後の作品は一昨年10月に撮影した映画「ムーランルージュの青春」で、インタビュー形式で出演。同作の田中重幸監督は「撮影時は車椅子ではありましたが、昔のことをしゃべり出すと、よくお話ししてくれた。大正生まれの人らしく威張らない、芯の強い人でした」と語った。

 戦後、新宿を拠点とした大衆劇場「ムーラン・ルージュ」で活躍。その後、劇団民芸など 国民的映画「男はつらいよ」では1969年の第1作から全48作品に登場。葛飾柴又帝釈天の門前通りで草団子店を守り、恋に破れた寅次郎が戻ってくると「イモの煮っころがし作っといたからね!」と温かく出迎えるなど庶民的キャラクターを演じきり、同シリーズになくてはならない存在だった。

 ◆三崎 千恵子(みさき・ちえこ、本名宮阪トシ=みやさか・とし)。1921年(大10)2月20日、東京都出身。日本橋白木屋百貨店勤務時代に、コーラス部発表会の歌を認められ、松竹入り。夫はムーラン・ルージュや劇団民芸で共に活動した俳優宮阪将嘉さん。小唄荻江節の名取で、きもの教室も開設していた。

 ▼竹下景子(「男はつらいよ」3作品でマドンナ役) 舞台がウィーンだった作品(89年「寅次郎心の旅路」)を除く2作で共演させていただきました。山田監督がどんなに細かい指示を出しても、まるで先生と生徒のように「ハイ」「ハイ」と従順に答え、丁寧に演じていらっしゃった姿がとても印象に残っています。まるで着物を普段から着ているような着こなしも素敵でした。着方のみならず、たたずまいに品格があればこそ。私もあんな着こなしができる女優になっていきたいと思います。

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