【新井さんが行く!!】目立つ投高打低 打者の“進化”求む

[ 2022年6月7日 05:30 ]

新井貴浩氏
Photo By スポニチ

 開幕から2カ月強を終えて規定打席到達で打率3割を超える打者はセ・リーグ3人、パは4人しかいない。完全試合やノーヒットノーランも生まれた。昨季も3割打者は年間通じてセ7人、パ4人だけ。近年の投高打低の傾向が今季は一段と際立つ。打者目線では試合時間の短縮のためかストライクゾーンが広い印象があるが、それ以上に、純粋に投手全体のレベルが上がったのが最大の理由だと思う。

 球速150キロ超えが当たり前。変化球の種類も増えた。以前なら先発が降りれば、抑え以外は力の落ちる投手が出て来るのが普通だった。今は違う。分業制が進み、試合中盤に投げる中継ぎでもビックリするほど球が速く強い。科学的な食事や練習が浸透し、投球フォームのメカニカルな分析も進んでいる。

 野球は投手が主動的で、打者が受動的。投手が自分の再現性を高めることに注力するのに対し、常に受け身の打者は反射と反応を磨くしかない。コンマ何秒の世界。全体的に球速が上がった投手に対して、いい反射、いい反応を身につけるには慣れが必要で、一定の時間はかかる。だからといって、この先もずっと投高打低が続くとは思っていない。打者出身として、次は打者側の“進化”を望みたい。いい投手がいい打者を育てる――ものだから。

 たとえば、最近活発になった阪神の打撃陣。先月下旬にロッテ・佐々木朗と対戦したことと無関係ではないと思う。いま日本で一番速い球に必死に対応。彼以上に球が速い投手はいないのだから、以降の投手に対しては多少は目が慣れ、気持ち的にも楽に臨める。実際、現役時代はダルビッシュら速球派投手と対戦後は他の投手の球が遅く見えたことがあった。

 投手側に対抗する形で、打者側でもフィジカル、テクニカル両面の研究・練習が進み、全体的なレベルが引き上げられていくことを期待したい。野球は点を取り合う競技。投げ合いもいいけど、観衆をワクワクさせる打ち合いも見たい。漫画の世界でしか存在しないと思っていた平均球速160キロ超えの投手が出現。次は160キロの球をドデカいホームランにする打者を見てみたい。(スポニチ本紙評論家)

続きを表示

2022年6月7日のニュース