【阪神・矢野監督新春インタビュー3】「俺は伝統をつくりたいのよ」 チームの完成度証明のためにも優勝を

[ 2022年1月3日 05:30 ]

インタビューに応じる矢野監督(撮影・平嶋 理子)
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 ――矢野イズムも浸透している。

 矢野監督 いつも言っている、カッコ良くいたいということのステージはめちゃめちゃ上がっていると思う。どういう野球をしていくかのビジョン、見える世界を想像してやっていく。俺は伝統をつくりたいのよ。勝つことはもちろんなんだけど、『タイガース、いいチームだよな』とか『俺らの自慢だよな』とか。それは俺一人ではできない。みんなでしかできない。だから、期待する選手を1人挙げてくれと言われても、それは違う。現役時代の自分がやってないことを、『一塁まで凡打でも全力で走ろうぜ』とか、子どもたちの野球が、凡打でも一生懸命走る野球になったらすごいいい野球になる。そういうところから諦めない気持ちをつくれるんじゃないかな。ホームラン打ったら誰でも足は動くけど、凡打でも足を動かすとか、それを選手たちが伝えていってくれたり、意識してくれたら、いい伝統ができて野球界が変わる。それは、みんなすごくよくやってくれている。その部分に関するチームの完成度は満足している。でも、それを証明するためには優勝するしかない。『勝ってないよね』と言われてしまうと…ね。だから、その証明として優勝がいる。これもオーバーだけど、今の選手の結果が良くなるようにもしたい。目の前の結果。現役が人生最高でプロ野球の選手が終わった後は落ちていくような形じゃなくて、そこからでもやれることはいっぱいあるし。1軍で試合に出てお金をたくさん稼いでユニホームを脱いでいく選手ばかりじゃないから。ここでやったことが社会に出ても頑張れる基礎というか。『あの時一塁まで全力で走ったな』とか『諦めない気持ちをつくったな』というのが、営業に行っても生きたりとか。そこから伝統ができて阪神ファンのみなさんにも『俺のチームいいよな』と思ってもらいたい。

 ――その矢野野球は、今年勝てばもっと完成に近づく。
 矢野監督 一丸になれていると思うけど、よりもっと強くできるものはたぶんあって、それが今年に仕上げるというか。新庄監督が日本ハムの監督になって言っていることがすごく理解できる。まさに「楽しむ」とかもね。選手の可能性を引き出すとか、そういうところも。野球界が面白くなるな。野球界全体を盛り上げている。

 ――キーマンはたくさんいる。
 矢野監督 そう。悪いけどまだエースも4番もいないわけやん。誰かが中心になって誰かが打ってって、まだ1人で勝てるチームではないのよ。近本が出てというのはあるけども、近本もまだ2番がいいのではというのがずっとあるのよ。俺がキャッチャーやったら2番近本がイヤ。でも近本が2番で生きないのだったらやっぱり1番かなって。近本がキーマンの1人ではあるけど。

 ――現時点でレギュラーは近本1人だけ。
 矢野監督 ポジション争いは全選手にチャンスはある。もちろんフラットにはならないよ。悠輔(大山)だって、隆(梅野)だって近いのは間違いないけど、でも誠志郎(坂本)だって聖也(木浪)だっている。全体の底は上がっていて、誰かがケガしてもガクッと落ちるわけではなくなってきた。特に内野は。でも外野はまだ…かな。だからテルのサードも練習する、チャレンジはしろとは言うてるけど、チームの編成上は外野を考えている。悠輔のレフトもオプションの一つ。そりゃ固定できるのが一番良いのは百も承知やけど、でも1年間143試合戦っていく中で、ケガがあったり好不調があったりもあるので準備しておく。例えば相手が左ピッチャーがきたときに悠輔が、レフトもできたら…。相手投手とこっちの投手みて、きょうは5点勝負になりそうやな、点を取らないと難しいかなと考えたときに、前半は悠輔をレフトでいくとか。守備のことに関しては最低限のことをやってもらえればいいので、割り切って勝負していかないととも思っている。(昨年の)後半も聖也がよかったときに聖也の外野は無理なんかなとか思った時もあった。いろいろなオプションをつくっておくということ。

 ――今季はお客さんが入る可能性がある。
 矢野監督 いま、満員になったらびっくりするやろうなあ。やっぱり見てもらってナンボやし、そこで良いプレーも生まれるやろうし。ヤジられることも増えるやろうけど、やっぱりタイガースファンの前でやりたいよね。テルのホームランの打球がどこまで飛ぶんやという、甲子園が超満員の時の歓声を聞いてみたいね。(終わり)

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