侍・栗山監督 ディープインパクトの墓前に誓った世界一「いよいよ自分が勝負のとき」

[ 2021年12月24日 05:30 ]

社台スタリオンステーションで眠るディープインパクトのお墓参りをする侍ジャパン栗山監督(撮影・高橋茂夫)
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 伝説の名馬に世界一を誓った――。今季限りで日本ハム監督を退任し、侍ジャパンの監督に就任した栗山英樹氏(60)が23日、北海道安平町の社台スタリオンステーションを訪問し、19年7月に天国に旅立ったディープインパクトの墓参りと、その産駒のコントレイルと初対面。23年に予定されるWBCで世界一を奪回するためのヒントをつかんだ。

 ディープインパクトの墓前に花を手向け、手を合わせた栗山氏は静かに語りかけた。これまで何度も勝負の極意を学ばせてくれた名馬。20年1月以来の墓参りで、侍ジャパン監督となってからは初めてだ。23年に予定されるWBCでの戦いへ向けて、心で会話した。

 「あのディープでさえ、凱旋門賞は勝ちきれなかった。今度はいよいよ自分が勝負のとき。“頑張れよ”と言われた気がする」

 06年の凱旋門賞。日本馬初優勝が期待されたディープインパクトは3位入線後、失格となった。世界制覇は果たせなかったが、種牡馬としても活躍。数多くのG1馬を世に送り出してきた。お墓の裏には小川が流れており、同ステーションの徳武英介氏は「子供たちがこの川を遡上(そじょう)してきてくれるように、という思いがあります」と説明した。

 墓参り後、栗山氏を待っていたのが父以来の無敗の3冠馬となったコントレイルだった。「ディープの最高傑作」と呼ばれ、11月のジャパンカップを制して引退したばかりの名馬を前に「ディープに匹敵するものを感じた」。何より感銘を受けたのは父の特性を受け継いだ、しなやかで柔らかい足の運び。「野球もスピードとパワーの時代。でも、力を伝える最後のところは柔軟性が重要」と言う。単純に速い、強いだけではない。「ジャパンの選手選考もそういう部分で判断を間違ってはいけない」と言葉に力を込める。

 徳武氏には近年の牝馬の躍進は気候変動や馬場など環境への対応力が牡馬以上にあるからだと聞いた。大きな流れを生む環境への対応力。栗山氏は「WBCもボールや球場への対応が課題。大きな流れの中で何が勝負に直結するか。勉強になった」と目を輝かせる。

 屈強な侍たちを率いて世界に衝撃を与える。多くを学んだ栗山氏は、最後に墓前に誓った。「世界一を獲ってくるよ」と。(秋村 誠人)

 ◇ディープインパクト 04~06年に活躍した日本産競走馬で、無敗でクラシック3冠を制した。06年の凱旋門賞は1番人気で3位入線も後にフランスでの禁止薬物が検出されて失格。生涯成績は14戦12勝で獲得賞金は14億5455万1000円。引退後は種牡馬として12年から昨年まで9年連続リーディングサイアー(産駒の獲得賞金総額トップ)。19年に頸椎(けいつい)骨折が判明し、7月に安楽死。17歳だった。主な産駒はコントレイル、ジェンティルドンナ、キズナなど。

 《「ディープ」効果? 16年は大逆転V》栗山氏の北海道の自宅がある栗山町と社台スタリオンステーションは車で約40分の距離。「最強馬から何かを得たい」との思いでディープインパクトとは日本ハム監督時代の16年1月に初対面した。札幌ドームの監督室に「たてがみ」を飾り、同年はソフトバンクとの最大11.5ゲーム差を逆転して優勝。「ディープのおかげ。追い込みと重なる」と感謝していた。その後も交流は続き、19年7月に安楽死の措置が取られた際は、数日後の8月上旬に厩舎を訪れ、別れを惜しんだ。

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