心臓手術であらわになったヤンキース・ブーン監督の存在の大きさ

[ 2021年3月15日 09:30 ]

ヤンキースのアーロン・ブーン監督(AP)
Photo By AP

 3月上旬、ヤンキースのアーロン・ブーン監督が心臓のペースメーカー装着手術を受けるために入院したというニュースは、地元ニューヨークに小さくない衝撃を引き起こした。09年に心臓手術を受けている同監督は「過去6~8週間は立ちくらみや息切れなどの軽い症状があった」という。

 「私たちにとってもショックだった。彼が不在でも普段通りに仕事をこなせるように留意しなければならなかった」

 チーム最古参選手である外野手ガードナーのそんな言葉は、ヤンキース選手たちの驚きが大きかったことを物語る。手術の場所が場所だけに、心配になったという人はヤンキース関係者以外にも多かったはず。地元メディアでもかなり大きく伝えられた。そして、そんな喧騒を見て、47歳になったブーン監督の存在感を改めて実感した人も多かっただろう。

 ヤンキースの指揮官に就任して4年目。過去3シーズンでは236勝148敗という好成績は残してきた。肝心のプレーオフでは惜敗続きだが、それでも去就問題らしきものが話題になったことはほとんどない。とにかくコミュニケーション能力に優れたブーンはチーム内外で人気が高く、不協和音が飛び交ったことは一度もない。ニューヨークの球団の監督としてはほとんど驚異的なことで、ファンからも既に十分な信頼を勝ち得ているのだろう。

 「マサには昨日、テキストメッセージを送った。チーム内であれほど重要な存在で、私がここに来るよりも前からいた選手を失うと感情的になる。数年にわたってマサの監督になれたこと、チームメートになれたことは特権だった。彼はヤンキースで素晴らしいキャリアを過ごした。いなくなるのが寂しい」

 今春、昨季までヤンキースの主戦格として活躍した田中将大の楽天への入団が決まった後も、そんな温かい言葉を残していたことは記憶に新しい。監督が自軍の選手、元選手にポジティブなメッセージを送るのは恒例だとしても、このように心のこもったことが言えるのがブーン監督の特徴。その説得力あるスピーチは前々監督のジョー・トーリ氏をほうふつさせる。戦術家タイプの指揮官よりも、ブーン監督のようなタイプの方が、エゴも大きなスーパースターが揃ったヤンキースを率いるのに適切と言えるのかもしれない。

 幸いにも手術は問題なく成功し、6日には早くも現場復帰した。選手、関係者、ファンが胸をなで下ろしたことは言うまでもない。もちろん人間の健康に大小はなく、人気のある監督だから元気でいてほしいというわけではないが、今回の衝撃の大きさから、今のヤンキースにおけるブーンの重要度が図らずとも示されたとは言えるのかもしれない。今後も健康を保ち、長いシーズンを乗り切ってほしいと願わずにはいられない。2009年以来の世界一を目指す上で不可欠な指揮官は、開幕の際にはファンからも大歓声で迎えられることだろう。(記者コラム・杉浦大介通信員)

続きを表示

2021年3月15日のニュース