【内田雅也の追球】「伸びる選手」の着目点 ハンク・アーロン氏が問いかけた「学ぶ気があるのかどうか」

[ 2021年1月24日 08:00 ]

ハンク・アーロン夫妻から、世界新記録となる756号の本塁打を祝福される巨人・王貞治(1977年9月18日、後楽園球場)

 ハンク・アーロンには<伸びるバッター>を見極める着目点があった。一つは<ボールがバットからはじき出されたように飛び出すかどうか>という長距離打者の素質や才能である。

 著書『ホームラン・バイブル』(ベースボール・マガジン社)に記している。初版は40年前、1981年当時に出た書で翌82年には野球殿堂入りを果たしている。手もとにあるのは2011年発行の復刻版だ。訳者の同社社長・池田郁雄が<現役時代を振り返りながら若い選手に話しかけている>と紹介している。

 注目したのは、もう一つの着目点である。それは<態度だ>。つまり<喜んで学ぼうとしているかどうかである>。

 この学ぶ姿勢の重要性についてアーロンは同書で幾度も繰り返し、語りかけている。<才能に恵まれていなくても積極的に学ぶ気持ちがあれば上達する>と、モーリー・ウィルスを例にあげている。引っ張り専門だった自身のマイナー時代、監督ミッキー・オーウェンが毎朝早く、球場に出て反対側への打法を指導してくれた。感謝の言葉が並んでいる。

 74年、ベーブ・ルースの714本塁打を破った。通算本塁打は大リーグ史上2位の755本塁打。2297打点は今も史上最多だ。本塁打数で上回った王貞治(巨人)との親交で幾度も来日し、日本でもなじみ深い。

 野球少年は誰もが「714」「755」という数字をそらんじていた。

 そんなアーロンの訃報が伝わった23日、甲子園室内練習場であった阪神の新人合同トレーニングを見た。コロナ下で現場取材はかなわず、球団提供の『虎テレ』で見た。

 キャッチボールで左腕・伊藤将司(JR東日本)の軸足でぴょんぴょん跳ねながらの柔らかなフォームを見た。ノックでは捕手・栄枝裕貴(立命大)がハーフバウンド捕球からのタッチをさりげなく行っていた。

 そんなことより、問題は態度である。スタッフからの説明に、姿勢を正して聞いていた。いや、こんな1シーンだけでは何も分からない。すべて、これからである。

 そう言えば、成長する要素として、野村克也は「素直さ」、江夏豊は「聞く耳を持っているか」をあげていた。古今東西、変わらぬポイントなのだろう。

 アーロンは若い選手に<学ぶ気があるのかどうかを聞きたい>と問いかけている。 =敬称略= (編集委員)

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