ライン引きもやります 逗子を引っ張る女子マネジャー 伝統を新校へ

[ 2020年8月26日 14:32 ]

ライン引きをする加賀谷(左)さん、松本さん(中)、松岡さん(撮影・柳内 遼平)
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 前身の逗子実科高等女学校時代を含めると創立98年の歴史を持つ逗子が25日、神奈川県内の中井町中央公園野球場で星槎国際湘南と3年生の引退試合を行い、8―3の勝利で有終の美を飾った。

 6月下旬に星槎国際湘南の土屋恵三郎監督が提案した私立と公立の垣根を越えた最後の舞台が実現。代替大会で出場機会の無かった選手や学生コーチだけではなく、逗子の3年生のマネジャーにとっても特別な一日となった。

 試合前、マネジャーの松本奈々美さん(3年)は選手が最後にプレーするグラウンドのラインを引いた。一般的な野球部では下級生部員の仕事。逗子は女子マネジャーが行うことが伝統だ。入部当初は戸惑ったというが「選手が自分の作った場で活躍すると嬉しい」とやりがいのある仕事になっている。

 代替大会は今月2日、藤沢清流に3―8で1回戦敗退だったが、この日は初回から3点を先取するなど打線が奮起して快勝。松本さんは「みんなの打っている姿が見たかった。かっこいい姿を見せてくれてありがとう」と選手に微笑んだ。加賀谷栞さん(3年)、松岡南那さん(3年)の3人でつけたスコアは赤色のヒットを表す線が9本引かれた。

 逗子のマネジャーの仕事ぶりは周辺校の間で評判だ。練習試合の際は道具の準備、ライン引き、お昼は相手校の指導者へカレーライスや、うどんなど温かい食事の提供と自分達ができることはなんでもする。そんな仕事人の彼女達も3人で涙することがあった。選手達が自分本位なプレーをして、チームとしてのまとまりを欠いていた時期があったからだ。

 悩んでいたときに杉山清之監督から伝えることの大切さを教わり、選手に立場を越えて率直な思いを伝えた。「正面からぶつかり合うことで選手の気持ちがわかった。伝えたからこそお互いを理解できた」と松本さんは振り返る。触発された選手達は、声かけやプレーへの指摘を互いに行うようになった。遠藤龍馬主将(3年)は「チームの士気を上げてくれる存在です」と信頼を寄せる。他人行儀だったチームが1つになって最後の夏を迎えることができた。

 逗子は23年度に逗葉と再編統合し、新学校となる予定。「やってきたことを新しい学校が引き継いでくれたらうれしいです」。自分達の仕事に誇りを持つ顔がそこにあった。

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