【内田雅也の追球】「カウント球」を仕留めろ 「苦手」攻略への手本を示した大山とボーア

[ 2020年7月10日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-1巨人 ( 2020年7月9日    甲子園 )

<神・巨(4)> 7回無死、大山は右前打を放つ(撮影・大森 寛明)
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 阪神は巨人左腕C・C・メルセデスを苦手としていた。昨年まで2年間で6試合対戦し、0勝4敗だった。

 だが、メルセデス自身の成績をみれば、2年間で13勝12敗。他チームは結構黒星をつけている。

 昨年の被打率は・292と打ち込まれていた。この被打率をカウント別でみると

 ▽0ストライク時・415
 ▽1ストライク時・386
 ▽2ストライク時・204

 となっている。

 初球など第1ストライクや2ストライク目を安打していたわけだ。誰にでも言えることだが、追い込まれると投手有利、打者不利だ。メルセデスは特に2ストライク前と後の差が大きいのが特徴だった。

 ここに攻略のカギがある。テーマは「早いカウントで仕留めろ」である。昨年までの阪神はこの、いわゆる「カウント球」を仕留められずに苦しんでいたわけだ。

 実は、この夜も従来のパターンに陥っていた。6回まで2安打無得点。対戦した打者のべ21人のうち実に15人が2ストライクと追い込まれていた。結果は14打数1安打(糸原健斗中前打)、1四球と、やはり打てなかった。

 しかも6回まで見逃しストライクが24球もあった。コーナーに決められ、手が出なかったのか、狙いを外されていたか。

 映画にもなったマイケル・ルイス『マネー・ボール』(ランダムハウス講談社)には、当時大リーグ・アスレチックスGMビリー・ビーンの部下でデータ分析担当ポール・デポデスタがカウント1―1からの3球目について語る言葉がある。

 「2ボール1ストライクなら平均的打者がオールスター級の打者に変身する。1ボール2ストライクなら貧打者に成り下がる。世間では初球のストライクが肝心だ、と言いますね。でも実は初球なんて、3球のうちの1球にすぎません」

 2ストライク目が分水嶺(れい)なのだ。ではこの夜、阪神はその2ストライク目にどう対応していたか。6回まででみてみる。

 記号は、○見逃し、-ファウル、×空振り、◎打球として、順に書き出してみる。

 ○---○○○○○×○×-○×◎

 数えれば▽見逃し8▽ファウル4▽空振り3▽凡打1だった。

 2ストライク目の16球中、半分を見逃しては追い込まれ、打ちにでても空振りやファウルで前に飛んだのは1度だけ(近本光司二ゴロ)だった。全く仕留めることができていなかったのだ。

 この悪循環を断ち切ったのが7回裏先頭の大山悠輔だった。2ボール―1ストライクから問題の2ストライク目を安打した。思い切りよく振り、内角直球に詰まったが、右前に飛んでくれた。

 狙い球はともかく、「1、2の3」といった感じで振り、「あっち向いてホイ」のように打球は飛んだが、この積極性こそがカギなのだ。

 続くジャスティン・ボーアが第1ストライクを見事に中堅右へ2ランを運んだ。ボーアは初めからスライダーに狙っていたようだ。第1打席はスライダーをファウルした以外は直球を2球見送って三振。第2打席は初球スライダーを二飛。3打席目でついに仕留めた。最後まで狙いを変えなかった信念に恐れ入るし、一振りで仕留めるすごみを見た。

 最後に、阪神投手陣が1失点に封じた相手・巨人打線についても、2ストライクを巡る攻防を書いておきたい。

 この夜、巨人も2ストライク後は14打数1安打(9回表の大城卓三右前打)、2四球だった。今季の巨人は特に追い込まれると弱く、2ストライク後の打率は岡本和真・192、(この日は欠場だが)坂本勇人・162、中島宏之・160、ジェラルド・パーラ・143と軒並み1割台。丸佳浩は・037だった=成績は8日現在=。

 つまり、いかに追い込むかが勝負だ。その点でたとえば、1回表2死三塁で岡本の2ストライク目を速球で押してファウルしたオネルキ・ガルシアは見た目以上の球威があったのだろう。

 2ストライクを巡る攻防が明暗を分け、阪神は本拠地・甲子園での初戦をものにしたのである。=敬称略=(編集委員)

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