“ダルが認めた男”お股ニキ氏 期待の「掘り出し物」ルーキーは楽天・津留崎&中日・岡野

[ 2020年6月18日 07:00 ]

楽天ドラ3・津留崎
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 今年のプロ野球は無観客で開幕。球場観戦は当面かなわないが、今だからこそお薦めしたい楽しみ方もある。鋭い分析力により、プロ選手からの信頼も厚い「プロウト(プロの素人)」のお股ニキ氏は、期待の「掘り出し物」ルーキーを、テレビ観戦を通じて選出した。(大林 幹雄)

 幼少期からテレビ観戦が大好きだったお股ニキ氏は、SNS上での野球分析が評判を呼び、わずか1年強で4冊の著書を出すほど。今月2日からの練習試合では、2人の新人投手が目に留まった。

 1人目は、楽天のドラフト3位・津留崎。4日のDeNA戦で5回、4番の佐野をスラット(縦のカットボール)2球にスプリットと、3球で空振り三振に斬った。

 「大学(慶大)時代からスラットは良かったがカーブが磨かれたのに加え、スプリットをシュート気味に落とせるようになった」

 打者を抑える上での「真理」として、お股ニキ氏が提唱するのが、質のいいフォーシームを磨いた上での(1)スラット・スプリット型、(2)スラット・カーブ型の投球。佐野から奪った三振は、(1)の投球が完璧に実践できたものだ。

 津留崎は開幕1軍入りを果たした。筋トレマニアのイメージが先行しているが「しっかりと考えて投球していると思う」とお股ニキ氏。似たタイプにソフトバンクの森、アスレチックスのヘンドリックスと両ストッパーを挙げつつ、ナックルカーブも習得中と幅を広げている点で「将来は先発もこなせる」と太鼓判を押した。

 津留崎をパ・リーグの新人王候補だとし、セ・リーグで「(広島の)森下の対抗馬になれるかもしれない」と推すのが、開幕先発枠入りを決めた中日のドラフト3位・岡野。5日、西武戦の2回に山川を3球で牛耳った投球に(2)のスラット・カーブ型を見た。直球、スラットで追い込み、パワーカーブ(高速カーブ)で見逃し三振。続く外崎と中村も三振に仕留めた。

 「キャンプ中はフォーシームが130キロ台だったがスピードが上がり、純粋なバックスピンに近づいてホップする軌道になっている。(スラット、パワーカーブに加え)スプリット、カーブとの織り交ぜもできている」

 岡野は山川の足の上げ方などを見て、左足を早く下ろすなどして幻惑。「打者のタイミングを見てモーションのタイミングを変えることもできる」と、社会人出身ならではのクレバーさも評価した。

 お股ニキ氏がファンに薦めるのは投球の軌道を追求する面白さ。

 「基本的にボールの軌道は速度、回転軸、回転数で決まる。だからボールの質を感じてほしい。スローモーションでどのようなリリースで回転を与えているか。その結果どのような変化をしているかが理解できれば、自分でプレーする人は投げるのに参考にできる」

 15年に大リーグが投球軌道計測システム「PITCHf/x」によるデータ分析を本格化。投球の回転数、回転軸などの数値がデータサイトで出回るようになると、独学で知識を深めた。これまでの観戦経験で得ていた感覚に、理論や数字の裏付けができた。

 「球種ごとにある程度、起こりやすい質というものはある。そうしたものを感じ取り、バットにどう当たるか、どのような結果になりやすいかを理解できれば、配球などでも、より楽しめると思う」

 18・44メートルの間での投手と打者の攻防。テレビ画面を通じてボールの軌道一つ一つに今まで以上に注目すると、新たなひいき選手が出てくるかもしれない。

 《スラットとは…スライダーとカットの中間》「スラット(スラッター)」は、お股ニキ氏が「万能変化球」と呼ぶ球。名前の通りスライダーとカットボールの中間の性質を持つ。フォーシームに近いリリース、球速、軌道で「カクッ」と鋭角に落ちる。スライダーやフォークよりも変化が小さく、空振りも取れるが、見逃せばストライクになる。スライダー、カットボールよりも「ピッチバリュー」(平均的な投球に比べて失点を増減させた値。プラスが大きいほど好評価)も高い。
 お股ニキ氏が推奨するのは(1)スラット・スプリット型、(2)スラット・カーブ型。質の良いフォーシーム、スラットに(1)はシュート気味に落ちるスプリットやチェンジアップを、(2)はスラットとカーブを組み合わせる。(1)の代表例はメッツのデグロム、ナショナルズのシャーザーら。(2)はアストロズのバーランダー、ドジャースのカーショーらがいる。

 ◆津留崎 大成(つるさき・たいせい)1997年(平9)10月10日生まれ、千葉県出身の22歳。中学時代は佐倉シニアで投手だけでなく捕手や外野手としてもプレー。慶応高から慶大に進み、4年時に明治神宮大会優勝。19年ドラフト3位で楽天に入団。1メートル77、86キロ。右投げ右打ち。

 ◆岡野 祐一郎(おかの・ゆういちろう)1994年(平6)4月16日生まれ、宮城県石巻市出身の26歳。聖光学院では3年春、夏に甲子園出場、高校日本代表入り。青学大では2年春からエース。東芝1年目の都市対抗で優秀選手賞。19年ドラフト3位で中日に入団。1メートル80、85キロ。右投げ右打ち。

 《オンラインサロンにプロ30人》お股ニキ氏が15年にダルビッシュ(当時レンジャーズ、現カブス)に関して何げなくつづったツイートが偶然、本人の目に留まったのをきっかけに親交がスタート。ツーシームを助言した際には「お股ツーシーム」として公認されるなど「プロウト」としての道が開けた。現在はソフトバンク・千賀をはじめ、球界で理論を取り入れる選手が急増中。今年から4人のグループで開設したオンラインサロン(会員制ウェブサービス)には約30人のプロ選手が加入している。

 ◆お股ニキ(@omatacom=おまたにき)生年月日、出身地は非公表。「ニキ」はネット用語で「兄貴」の意味。本格的な野球経験は中学の部活動まで。サッカー観戦も趣味で、Rマドリードの大ファン。

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