マンフレッド・コミッショナーが選手会のクラーク専務理事と直接会談 大枠合意もまだ流動的

[ 2020年6月18日 12:20 ]

選手会のクラーク専務理事と1対1の会談を行った大リーグ機構のマンフレッド・コミッショナー(AP)
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 大リーグ機構(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナー(61)は17日、選手会のトニー・クラーク専務理事(48)と会うために自らニューヨークからアリゾナ州フェニックスに乗り込み、頓挫している開幕に向けての交渉を、ホテルの一室で数時間にわたって「1対1」で行ったことを明らかにした。

 労使双方のトップが顔を合わせるのは新型コロナウイルスの感染拡大でキャンプが中断となった直後の3月14日以来。アリゾナ州スコッツデールの「ウエスティン・キアランド・リゾート&スパ」で極秘交渉が行われたのは16日で、マンフレッド・コミッショナーは「私のリクエストだった」とMLB側からの要請で“トップ会談”が実現したことを公表した。この席で同コミッショナーは「日割りのサラリーを全額保証した上で7月20日から10週間で60試合を行う」と新たな案を提示。最終案としていた「日割りの70%で72試合」とは異なる提案を行い、「今季を始める自信はない」と語っていた前週までとは違った対応を見せた。

 クラーク専務理事は大枠ではこの“素案”に合意したと報じられているが、メディアの取材には対応しておらず真意は不明。コミッショナーは各オーナー、専務理事は各チームの選手の代表にこの案の是非を問わねばならず、まだ不透明な部分が残されている。

 今季開幕に向けた交渉は、MLB側がコーネル大&ハーバード大法科大学院出身のダン・ヘイレム副コミッショナー(54)、選手会側がペンシルベニア大&ボストン大法科大学院出身のブルース・マイヤー氏(58)という両組織における“アイビーリーガー同士”の労務交渉のスペシャリストが行っていたが、最終局面に入ると両者が“皮肉”と“敵意”に満ちた書面のやり取りをするようになって決裂。マンフレッド・コミッショナーはこの動きを見てトップ同士の直接交渉に切り替えたもようで、選手会側の動向が注目されるところだ。

 AP通信によれば「60試合+日割り全額」というコミッショナーの最終案では選手の年俸の37%に相当する14億8000万ドル(約1584億円)が保証され、プレーオフ出場枠を従来の10チームから16チームに拡大することによって最低でも14試合分の放送権料が増える計算。ただし選手会側は「89試合+日割り全額による55%(総額22億ドル=約2354億円)」の保証を求めており、依然として開きのある試合数をどうするのかという問題を抱えている。

 スポーツ専門局ESPNのバスター・オルニー記者は「両者が話し合ったことはいいことだが、これはオーナー側が完全に屈服するか、2020年シーズンを効果的に終結させるかのどちらかという問題」と、“合意形成”へのプロセスに入るのかどうかについては懐疑的。ジェシー・ロジャース記者も「あくまできょうは両者が再検討する姿勢を示しただけ。(新型コロナウイルスの影響で)今季がどこで終わるかわからないのに日割りの全額支給を認めるなら、それは終わりへの始まりだ」と“マンフレッド案”に疑問を投げかけた。

 なおヤンキースのランディ・レビン球団社長(65)は17日、「30球団すべてが試合を行うことを望んでいる。問題なのは健康と安全の問題であって金銭は障害ではない」とコメント。労使双方が“ゴーサイン”を出すように促しているが、その一方で米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長(79)は「問題はシーズンの時期。寒くなる10月下旬以降に試合は行わないほうがいい」と第2波による影響を懸念していた。

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