稲葉監督「侍ジャパン2019年問題」に言及 筒香、菊池、秋山のメジャー挑戦「応援」

[ 2019年1月6日 10:00 ]

今年の目標を「創」とした侍ジャパン・稲葉監督(撮影・会津 智海)
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 侍ジャパンの稲葉篤紀監督(46)がスポニチ本紙の新春インタビューに応じた。20年東京五輪金メダルを見据え、今年11月の第2回プレミア12は改めて「必勝」を強調。広島・菊池、西武・秋山、DeNA・筒香の主力3選手が今季終了後にメジャー移籍する可能性が浮上した「侍ジャパン2019年問題」にも言及。移籍すれば東京五輪出場が絶望的となるが、夢を応援する姿勢を打ち出した。(聞き手、構成・後藤 茂樹)

 ――昨年は「試す、学ぶ」年と位置付けた。今年の一字は「創」と決意を込めたが?

 「19年はチームを少しずつ創っていく年にしたいと思っています。試す、学ぶということは継続しながら、20年五輪へ向け、創っていく作業を進めたい」

 ――3月にメキシコとの強化試合がある。

 「メキシコ戦2試合は広い視野で試せる、本当に最後の最後ですね。私は20年五輪までですが、その先もジャパンは続く。若い選手が経験するのもありかなと、幅広く見てこの2試合はやりたい」

 ――1軍の実績ではなく、将来性という点では日本ハム・清宮の名前も挙がるのか?

 「彼も当然そういう候補には入っている。どうなるか分かりませんが、メンバー編成はこれからしていく」

 ――将来性を見据えた部分を、指揮官としてどこまで考えるか?

 「東京五輪の金メダルというのは、絶対獲らないといけない。勝ちにこだわる中で、将来性を見越してという選手は難しい。いざ五輪という時はとにかく勝つ、そこにこだわってやっていきたい」

 ――11月のプレミア12も「勝ちにいく」と強調してきた。五輪予選を兼ねる中、日本は開催国枠で出場権は関係ないが、ここで「勝つ」ことの意義とは?

 「やはり自信でしょうね。大会で勝つという難しさは、私も選手もみんな知っている。これまでの五輪も、プレミアも前回負けている。もう一度ああいうところを、勝つ。自信にもなるし、これが五輪につながっていくと思っていますので」

 ――自ら指揮を執った昨年10月のU―23W杯は、予選リーグから全勝で迎えた決勝でメキシコに敗れた。監督としては公式戦14試合目で初黒星となった。

 「凄く(08年の)北京五輪を思い出しました。準決勝・韓国戦で右飛を捕られて敗れて、というその瞬間のことを。うわ、この思いをまたしたのか。この経験はもう絶対したくない、と」

 ――五輪本番を想定し、コーチ3人で臨み、ヘッドコーチを置かずに監督自らサインも出した。延長タイブレークを経験するなど、指揮面での収穫は大きかったと思う。

 「敗戦はトップチームでは絶対許されないです。ただ私も含めて、これからの選手がああいう経験をした。これは絶対に次につながっていくと思います」

 ――日米野球で内、外野のリーダーに指名した広島・菊池、西武・秋山、さらに昨年3月のオーストラリアとの強化試合で4番に据えたDeNA・筒香。柱と言える3選手が今季終了後、メジャー挑戦する可能性が浮上した。メジャーに行けば20年の東京五輪出場は絶望的となる。

 「僕の中では、メジャーに挑戦する選手は、もう心の底から応援したいです。一年でも早く行った方がいい。僕もメジャーに挑戦しようと思った人間。彼らの気持ちは、よく分かりますから」

 ――指揮官としては頭の痛い難題だが?

 「ケガなど不測の事態はたくさんある。その中で集まったメンバーが、僕は絶対最高のメンバーだと思っているので。昨年の日米野球も筒香選手のケガや、菅野選手の辞退があった。健康状態も調子も良く、気持ちもやってくれる、という選手がバンッと集まった時に、結束力はそこで生まれる」

 ――3選手がいなくなることが危機ではない。それを想定外としてしまうことの方が危機だと?

 「絶対にこの選手は入れてほしい、ではない。ひょっとしたらメジャーに行ってしまう。でもそのポジションは空くわけですから。例えば秋山選手がいなくなってしまったという時に、“じゃあ上林選手いるじゃない、全然いけるよね”とか。それも準備ですよね。いろんな選手を見ていくという」

 ▽プレミア12 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が世界野球ランキングにより選出した12カ国・地域により、4年に一度争われる国際大会。第2回大会は11月に行われ、1次ラウンドは4チームずつに分かれ、同2〜8日に台湾、韓国、メキシコで実施。各組上位2チームが同11〜16日に東京ドーム、ZOZOマリンでスーパーラウンドを戦い、17日に東京ドームで決勝が行われる。アジア・オセアニア最上位国と北中南米最上位国は東京五輪出場権を得る(日本は開催国として結果にかかわらず出場できる)。15年の第1回大会では、日本は準決勝で韓国に3―4で敗れ、3位に終わった。

 ◆稲葉 篤紀(いなば・あつのり)1972年(昭47)8月3日生まれ、愛知県出身の46歳。中京から法大を経て、94年ドラフト3位でヤクルト入り。04年オフに日本ハムにFA移籍。08年北京五輪、09、13年のWBC出場。14年に現役を引退した。通算2213試合に出場し、2167安打で打率・286、261本塁打、1050打点。左投げ左打ち。

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