「早実あるある」勉強できる生徒と仲良くなれるかが進級のカギ

[ 2015年7月18日 09:20 ]

早実のユニホーム

 スーパー1年生・清宮幸太郎内野手の出現で今夏注目を集めている早稲田実業(早実)。今年で97回大会を迎えた全国高校野球選手権大会には、1回大会から出場している名門校だ。OBには王貞治氏(ソフトバンク球団会長)、荒木大輔氏(元ヤクルトほか)らそうそうたる顔ぶれが並ぶ。

 そんな伝統ある野球部に所属している部員たちは、普段どんな生活を送っているのか。2006年に斎藤佑樹投手(日本ハム)を擁して全国制覇を成し遂げた当時の野球部員・Wさん(仮名)が、「早実野球部あるある」をこっそりと教えてくれた(以下の「あるある」は2004~2006年当時のものです)。

 【早実野球部あるある1】電車内で「部則」にがんじがらめになる1年生。

 早実は校舎と野球部のグラウンドが離れたところにあり、野球部員は授業が終わればグラウンドまで電車を乗り継いで行かなければならない。1年生部員は代々口伝されている「部則」によって、さまざまな制限が課せられている。「先頭車両に乗らなければならない」「座ってはならない」「つり革をつかんではならない」「片足に重心をかけてはならない」「バッグを肩にかけてはならない」……などなど。そうやって野球選手にふさわしい立ち姿を磨いているのかとWさんに聞いてみたところ、「いや、意味はないと思います」とつれない答えが返ってきた。ちなみに、Wさんの代までは学帽の着用も義務づけられていた。

 【早実野球部あるある2】OBが偉大すぎて、現実感がない。

 毎年1月にOB総会が開かれる早実野球部。国民栄誉賞を受賞した王貞治氏を「王」と呼び捨てするような大先輩がゾロゾロと集結。現役部員は非日常空間で小さくなるしかないという。なかには口うるさいOBもいて、現役部員に手厳しい小言を浴びせることも。失礼ながら「うるせぇな」と思ってしまうそうだが、当然、偉大すぎて口答えなどできるはずもない。

 【早実野球部あるある3】クラスの勉強できる生徒と仲良くなれるかが進級のカギ。

 近年は「文武両道」の学校として知られる早実。たとえスポーツ推薦(野球部は最大9名まで)で入学しても、授業は狭き門をくぐり抜けてきた一般生と同じクラスに放り込まれる。勉強との両立に大苦戦する3年間、早稲田大に進学する以前に、進級すら危ぶまれる部員も出てくる。そんな時、クラスの秀才に教えを請うための謙虚さと社会性が必要になってくる。また、「クラスの秀才に助けてもらう」という行動パターンは、大学生活にもそっくりそのまま生きてくるという。

 【早実あるある】「早稲田実業高校」と言われると、「いや、『実業学校』だから」と訂正する。

 このあるあるのみ、「野球部」を外させてもらった。正式名称は「早稲田大学系属早稲田実業学校高等部」で、「高等学校」ではない。恐ろしく細かいところだが、当事者にとっては大事なことなのだ。せめて「早稲田実業高等部」と言えば許してもらえるのではないだろうか。もし、お近くに早実の卒業生がいたらお試しあれ。

 【早実野球部あるある4】先輩にボールを渡す際、なぜか「オッ!」と言ってから渡す。

 打撃練習中、ピッチングマシンにボールを入れている先輩にボールを渡そうと思ったら、どうすればいいか。その下級生はまず先輩の名前を呼び、先輩がこちらを見たら「オッ!」と小さく叫んでからボールを投げなくてはならない。なぜ「オッ!」と言わなければいけないのか。その理由は誰に聞いてもわからない。偉大なる先輩・王貞治氏に敬意を表して頭文字を取ったわけでもなく、大隈重信(大学創設者)の頭文字を取ったわけでもないようだ。

 【早実野球部あるある5】早大学院との試合が紅白戦にしか見えない。

 よく見ると帽子の型やユニホームのデザインに微妙な違いがあるのだが、はた目にはそっくりで、試合をやっていても紅白戦にしか見えない。ちなみに今春の東京大会4回戦で同カードが実現。早実が11対2で勝利した。今夏もお互い順調に勝ち上がれば、西東京大会準々決勝で「早稲田ダービー」が実現する。応援は互いに早稲田大の影響を受けているが、「都の西北」の歌詞で始まる有名な大学校歌は、早大学院しか歌うことができない。

 【早実野球部あるある6】OBになってから急激に芽生える母校愛。

 現役時代は当たり前になっていた、早実ならではの注目度の高さやファンのありがたみに卒業してから気づかされるという。また、現役時代はうっとうしく感じられたOBも、「仕事で力になってくださる方もいて頼もしい」(Wさん)と、つながりの厚さを実感する。「入部した頃は部則が厳しすぎて『何やってんだろう、自分』という感じだったのですが、やっぱり今は『早実で野球ができて良かった』と心の底から言えます」。Wさんは晴れやかな笑顔で「早実野球部あるある」を締めくくった。

 ◆文=菊地選手(きくちせんしゅ) 1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書に『野球部あるある』シリーズがある。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。

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