41回防御率0・00 前橋育英 決勝進出 高橋光成「負ける気しない」

[ 2013年8月22日 06:00 ]

<前橋育英・日大山形>力投する前橋育英・高橋光

第95回全国高校野球選手権大会準決勝 前橋育英4―1日大山形

(8月21日 甲子園)
 前橋育英(群馬)の高橋光成(こうな)投手(2年)が日大山形との準決勝に先発し、1失点完投で初の決勝進出に導いた。失策絡みで自責点は0。ピンチに強い2年生エースは5試合41回を投げ、いまだ防御率0・00だ。このまま0・00で優勝すれば39年・海草中(和歌山)の嶋清一と48年・小倉(福岡)の福嶋一雄に並ぶ快挙。「ミスター0」は22日に初優勝を懸け、延岡学園(宮崎)戦(正午開始)に先発する。

 初回1死満塁。いきなりピンチを迎え、高橋光の眼光が鋭くなった。5番の吉岡への初球は124キロスライダー。外角へのボール球を投げた後、2球目で思い切り腕を振った。138キロ直球。力で二ゴロ併殺に仕留め、先制点を許さなかった。

 「(疲れは)ちょっとあったけど、先制点は絶対許したくなかった。絶対抑えようと思って、気持ちを入れ替えた」
 7安打を許し、得点圏に4度走者を進められた。そのたびにギアを上げた。6回に中越え二塁打を浴び、中堅手の悪送球で三塁まで進塁された。犠飛で1失点を許したが、失策が絡んだため自責点0で完投。得点圏では安打を1本も許さなかった。5試合41回で防御率は0・00。「自責1」になったと勘違いしていた高橋光は「失策だと(自責点は)0になるんですか?」と目を丸くした。

 1メートル88の長身右腕。「日本を代表する凄い投手」と憧れる開幕17連勝中の楽天・田中と全く同じ身長だ。最速148キロの直球、変化球はスライダーとフォークを武器にするところも同じなら、ピンチでの強さまで似ている。先頭打者への被打率は・205。昨季春夏連覇した藤浪(大阪桐蔭、現阪神)の・057と比較すれば決して優れてはいない。通算でも・206だが、得点圏では・107まで下がり「(ピンチでは)気持ちが入るので、いつもより思い切り腕を振ってコースに投げる」と自己分析した。

 ピンチでも平常心を保つ。その秘けつにゴミ拾いがある。高橋光はナインとともに入学時から毎朝15分間、寮の周りをゴミを拾いながら散歩する。「ゴミを拾うのは一つの気づき。野球でも相手の変化に気づくことができる」と荒井直樹監督。巨人のエースだった桑田真澄も現役時代にゴミ拾いし、打者との駆け引きに生かした。高橋光も「いつもと同じ生活ができて、気持ちが穏やかになってそれがつながった」と話す。大阪の宿舎でも毎朝続けている。

 精神面での成長も大きい。春まではピンチになると周りが見えなかったが、同じ2年の中堅手・工藤は「今は内野手に声を掛けたり、立ち居振る舞いが変わった」という。前夜は試合のことを考えすぎて寝付けなかったが「でも、勝つイメージが出来上がった」とプラス思考全開だった。

 2年生エースは初戦の岩国商戦(山口)で歴代2位の9者連続奪三振。史上7人目の2試合連続1―0完封と記録を打ち立て、ついに決勝まで勝ち上がった。「甲子園で戦ってきて自信がついてきた。負ける気がしない」。防御率0・00のまま初出場初優勝へ。憧れの田中が駒大苫小牧2年時に連覇を達成したように。

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2013年8月22日のニュース