VIP待遇なし、マンション暮らし イチはストレス受け入れた

[ 2012年10月5日 08:00 ]

<ヤンキース・レッドソックス>大量点で勝利し、チームメイトと抱き合って喜ぶヤンキース・イチロー

ア・リーグ ヤンキース14―2レッドソックス

(10月4日 ニューヨーク)
 西海岸のシアトルから約3900キロ離れた東海岸のニューヨークへ。ヤンキース・イチローが変わったのは背番号だけではない。

 マリナーズ時代は、クラブハウスで3つのロッカーを使用していた。チームの「Only one」の存在だけに許されるVIP待遇。しかし、ヤンキースではあくまで「One of them」。だから、ロッカーは1つ。マ軍本拠地のセーフコ・フィールドではベンチ中央に、特別に穴を開けたイチロー専用のバット置き場があった。ヤンキースタジアムではベンチの一番右隅にバットを立てかける。

 日常生活の変化も大きいだろう。シアトルの緑と水の大自然に囲まれた街から、米国一の喧騒(けんそう)を誇る大都会へ。湖を見渡す大豪邸から、高層マンションに変わった。美しい景色を横目に見ながらの球場へのドライブは、マ軍時代は最高のリラックスタイムだったという。それが今では、道路はデコボコ、渋滞は日常茶飯事、市民の運転マナーが最悪のニューヨーク。運転を諦め、リムジンでの送迎を受けている。一体、イチローはストレス解消をどこでしているのだろうか。

 そんなことが気になっていた時、米メディアに対し、愛犬「一弓(いっきゅう)」について語った。「彼(一弓)はシアトルの緑いっぱいの環境で育った。今は高層ビルと雑音に囲まれストレスがたまっている」。飼い主として思いやりつつ、自身のストレスを語っているようにも思えた。

 それでも、野球選手として優勝を上回る魅力はない。ジーターの「練習試合は終わり」という言葉に心を震わせ、気を引き締め直したイチロー。その表情を見て、ニューヨークに、ヤンキースには、野球選手として彼がやり遂げるべきことが、まだまだ残っているとあらためて感じた。 

 ▽01年マリナーズの地区優勝 メジャー1年目のイチローが首位打者、盗塁王を獲得する大活躍で、ブーン、マルティネスらと強力打線を形成。投手陣もガルシア、モイヤーらの先発陣に、守護神は佐々木と盤石で、開幕から首位を独走。5月11日には2位に10ゲーム差を付け、146試合目の9月19日に優勝決定。最終的にア・リーグ新記録の116勝(46敗)をマークした。地区シリーズではインディアンスを下したが、ヤンキースとのリーグ優勝決定シリーズに1勝4敗で敗れた。イチローは地区シリーズは打率・600と好調だったが、リーグ優勝決定シリーズは同・222と抑えられた。

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2012年10月5日のニュース