WBC米国代表のデローサ監督はプロ監督経験ゼロ、オールスター選出ゼロ、いかにスター軍団を率いるか

[ 2023年1月21日 11:52 ]

WBCアメリカチームのデローサ監督
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 スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者が、3月開催のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で米国代表を率いるマーク・デローサ監督(47)について20日(日本時間21日)詳しく報じている。

 同監督はプロのチームを率いたことは一度もないが、コーチ陣にはケン・グリフィーJr、アンディ・ぺティットなど超大物が並ぶ。さらに選手はマイク・トラウト、ポール・ゴールドシュミット、ムーキー・ベッツら大スターが集合。同サイトは「大変だと思うけど、頑張ってね!」とエールを送る。

 デローサは頭は良い。出身校はアイビーリーグのペンシルバニア大のビジネススクール。しかし“頭でっかち”ではなく、ニュージャージー州出身で実体験を通していろいろ学び世間のこともわかっている。メジャーで16シーズンプレーしたが、レギュラーでなかった時ですら、チームリーダーだった。仮にWBCで米国の王座を防衛できれば、メジャーの次の有力な監督候補になれるかもしれない。友人で、コーチ陣の一員でもあるマイケル・ヤングはデローサなら昔ながらの野球のやり方と、今風のデータ分析の間に立って、両方をうまく使いこなせると太鼓判を押す。

 問題はプロ監督経験ゼロ、選手としてオールスター選出経験ゼロで、いかにスター軍団を率いるか、だ。デローサは「自分自身について、自分の信じることについて自信を持たないといけない。しかしながらこのチームにはたくさんの野球知識が詰まっていて、多くの素晴らしい野球人がいる。決断を下すときは場の空気も読めないといけない」と言う。現在の仕事はMLBネットワークの野球解説者で、自信を持って解説をしている。しかしながら米国代表の監督となり、周りには自分より上のレベルの元選手や選手だらけだ。現役時代、実はポストシーズンは得意で、22試合でOPS(出塁率+長打率)は・980だった。しかしながらオールスター経験はなく、MVPや新人王の投票対象になったこともなく、ゴールドグラブ賞とも縁がなかった。

 大物コーチを部下に持ち、彼らより大きな権限を持たされていることが不思議ではないかと尋ねられ、「そういう風には見たくない」と返事したものの、怖気づく部分もあると本音が出る。例えばデーブ・リゲッティブルペンコーチは子供の頃に憧れたヤンキースの選手だった。そんなデローサにぺティット投手コーチは「最終的には監督はあなたなのだから」と言っているそうだ。ジェリー・マニュエルベンチコーチは元ホワイトソックスとメッツの監督だが、「監督はあなたであって私ではない。私の言うことに全て同意しなくていい。慣れて学んでいってもらえれば」と助言している。

 大物ぞろいのコーチ陣で、デローサが特に重要視するのはディノ・イーベル三塁ベースコーチ。ドジャースの三塁ベースコーチでもあり、唯一の現役コーチだ。「今、試合に準備するのに何が必要か、選手が代表チームに入っていく上で何が大事か知っている」と頼っている。米国代表の選手集めの責任者は元エンゼルスGMのトニー・リーギンズ。デローサも意見を言い、例えば左打者が必要と、アストロズのカイル・タッカー右翼手、メッツのジェフ・マクニール二塁手を推した。クレイトン・カーショーを入れたのもデローサだった。代表に入りたいというカーショーが電話で、「3月10日の時点では投げられるリミットがある。それでも十分ならチームに入りたいが、あなたがブルペンの負担になると考えるなら、そこは理解できる」と言ってきたが、歓迎して受け入れた。ちなみにカーショーが参加したものの、米国代表の投手陣は野手に比べて明らか手薄。ローゼンタール記者はローテーションのトップは日本とドミニカの方が上だろうと指摘する。

 ロブ・マンフレッドコミッショナーは各球団に協力するように言ったが思い通りにはならなかった。加えて、これまで通り、WBCに参加する選手については、健康な状態で在籍球団に戻すことが最優先事項。スタッフが球団と連絡を取り合い、起用法などの制限、リクエストを受け入れねばならない。「今日は60球までと球団が言ってくればそうなる」とデローサ監督。米国代表がファイナルまで進出すれば、3月11日の初戦から11日間で7試合を戦う。特にプールCの第一ラウンドでは、まだ長いイニングを投げられない先発投手を抱き合わせでどう起用していくか、最善策は何か、デローサ監督と投手コーチたちは今、頭を悩ませている。

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2023年1月21日のニュース