【解説】中日 4日で主力打者2人放出の根底に、立浪監督の「このままでは勝てない」という危機感

[ 2022年11月19日 05:00 ]

中日・立浪監督
Photo By スポニチ

 中日の京田陽太内野手(28)とDeNAの砂田毅樹投手(27)の交換トレードが成立し、18日に両球団が発表した。中日は15日にも阿部寿樹内野手(32)とのトレードで楽天から涌井秀章投手(36)を獲得したばかりで、わずか4日間で主力打者2人を放出した。いま中日で何が起きているのか。担当記者の中澤智晴が迫った。

 4日間で2度のトレード成立。いずれも中日側から持ちかけたもので、まだ第3弾もあるとみている。

 チームの日本人打者では本塁打(9)と打点(57)で今季最多だった阿部に続き、選手会長でもある京田がチームを離れた。京田はシーズン中からトレード候補に挙がっていた。将来の幹部候補でもある生え抜き野手の放出の根底にあるのは立浪監督の「このままでは勝てない」という危機感だと思う。

 「勝つ野球をするために妥協はしない」と臨んだ1年目は最下位。打線の低迷が響いた。就任直後から選手に積極的に声をかけ、特に野手には自ら先頭に立って指導してきた。5月4日のDeNA戦(横浜)では攻守で精彩を欠いた京田に「戦う顔をしていない」と試合中に2軍降格を告げて強制送還。助言と刺激を与え続けたが、好転しなかった。

 一年を振り返った10月上旬の会見では「これからいろいろ変えていかないといけない」と予告。収穫を問われても、「あるかな?今年は何とか選手に声をかけながら力を発揮させてやりたいという形でスタートした。チームに刺激を入れるために京田を叱咤(しった)したりしてきたが、結局、何も変えられなかった」と漏らした。

 現状に限界を感じ、オフに入ると一気に変革にかじを切った。退団者は16人、支配下から育成への変更は5人を数え、開幕オーダーから3人、開幕ロースターからは6人がいなくなった。新戦力の選定にも積極的に動き、ドラフトでは指名した7選手(育成を除く)のうち即戦力内野手が4人を占めた。いまは新外国人調査のためドミニカ共和国でウインターリーグを視察中。自らの手でチームをつくり直すという気概が感じられる。

 もちろん変革にはリスクを伴う。阿部と京田がいなくなった二遊間は来季高卒3年目の土田、ドラフト2位・村松ら未知数の人材が候補に挙がる。それでも、可能性にかける選択をしたのだろう。

 恩師である星野仙一氏は86年オフに中日監督に初就任して牛島和彦、翌年オフに大島康徳という投打の主軸をトレードで出した。阪神監督時代も02年オフに24人の退団者を出す血の入れ替え。いずれも就任2年目のリーグ優勝につなげた。くしくも87年ドラフト1位で入団したのが立浪監督で、変革を間近で見た。闘将と重なる信念のチームづくりが実るか、注目している。(中澤 智晴)

続きを表示

この記事のフォト

2022年11月19日のニュース