仙台育英が劇的勝利 「青春って密」流行語大賞ノミネートの須江航監督が実践する「優しさは想像力」

[ 2022年11月19日 19:36 ]

第53回明治神宮大会高校の部   仙台育英5―4沖縄尚学 ( 2022年11月19日    神宮 )

<明治神宮大会高校の部  沖縄尚学・仙台育英>サヨナラ勝利に喜ぶ仙台育英ナイン(撮影・郡司 修)
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 明治神宮野球大会は19日、高校、大学で準々決勝3試合、大学で1回戦1試合が行われた。高校の部では仙台育英(東北)が9回に4番・斎藤陽(ひなた)外野手(2年)の決勝打などで5点を奪い沖縄尚学(九州)に5―4で逆転サヨナラ勝ちした。

 優しさは想像力。須江監督が大切にする言葉だ。4点差を追いついた9回1死二塁。打席に斎藤陽が向かう。そこまで無安打の4番は「打たないと死ぬんじゃないか…」というほどの重圧を感じていた。心中を察した指揮官はすぐに伝令を送る。「顔が暗いぞ」とのメッセージを受けた左打者に笑顔が戻った。
 
 歓喜はすぐに訪れる。中前にサヨナラ打を放った斎藤陽はナインにもみくちゃだ。土壇場の9回に5安打5得点と「すごく密な攻撃」で劇的勝利。今夏の甲子園では2年生ながら4番も担った男は「うれしい。一言に助けられた」と山田脩也主将(2年)が駆け寄った伝令に感謝した。投手陣が乱調で主導権を握られながら最後につかんだ白星。4強進出を果たした須江監督は「チームの成長を感じます」と目を細めた。

 今夏の甲子園大会で果たした東北勢初の日本一。今月4日には須江監督が甲子園の優勝インタビューで発した言葉「青春って、すごく密なので」が「2022ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされた。試合中の選手に言葉を届けることができる「伝令」については「とても大事。時間を止めたり、考えを整理する時間だったり、相手に深読みしてもらったり」と勝負手として大切にしている。選手の心情に応じて届ける「優しさ」が力を引き出す秘訣(ひけつ)だ。

 すでに出場を当確させている来春選抜は今大会優勝校の地区に「神宮大会枠」が割り当てられる。よって優勝すれば3枠の東北地区から4校出場となるだけに須江監督も「1校でも多く東北の高校が経験を積めば、近いうちに、またどこかの学校が優勝することができると思う。何とか1枠、持ち帰りたい」と誓う。あす21日の準決勝の相手は大阪桐蔭とクラーク(北海道)の勝者。東北の未来のためにも、頂点に立つ。
(柳内 遼平)


◇須江 航(すえ・わたる)1983年(昭58)4月9日生まれ、さいたま市出身の39歳。仙台育英では2年時から学生コーチを務め、3年時に春夏の甲子園に出場。八戸大(現八戸学院大)でも学生コーチを務めた。06年から仙台育英の系列の秀光中軟式野球部監督を務め、14年に全国大会優勝。18年1月から仙台育英監督に就任し、今夏を含めて5度の甲子園出場に導く。情報科教諭。

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