【箱根駅伝・金哲彦氏 視点】伸び伸び安全策取らず快走の青学大 何で?何で?動揺消えなかった駒大

[ 2024年1月3日 16:27 ]

大会新記録で総合優勝し、ゴールした青学大アンカー宇田川瞬矢を迎える笑顔のチームメート
Photo By 代表撮影

 やはり往路での2分38秒差は大きかった。追う駒大は最初から無理をしてでもハイペースで突っ込まざるをえず、最後まで自分たちの走りができなかった。しかも安全策で前半は自重すると思われていた青学大の選手たちもタスキを受け取るなりガンガン飛ばしたので、結果的に6分35秒もの大差がついてしまった。

 青学大の復路の選手は全員箱根を走るのが初めてだったが、逆にそれが青学大の強みにもなった。他校のように一部のエースや経験者に頼るのではなく、純粋に今一番練習ができている選手、一番状態が良くて調子を上げている選手を選べるだけの選手層の厚さが青学大にはある。もちろん、初めて箱根を走るという緊張感はあっただろうが、原監督は選手を乗せるのがうまい。どの選手も伸び伸び楽しそうに走り抜き、見事に2年ぶりの総合Vを成し遂げた。

 負けた駒大もタイム的に大きく崩れたような選手は1人もいなかった。ただ往路の3、4区が想定外の展開になって「何で?何で?」と動揺したまま最後まで行ってしまった。のびのび楽しく走っていた青学大とは対照的だった。

 それにしても青学大の総合タイム10時間41分25秒は凄い。まさにスピード駅伝の象徴だ。このタイムを単純にマラソンに換算すれば2時間4分39秒になる。私が走っていた頃はだいたい1キロ3分5秒のペースだったのに、100回を数える歴史の中で徐々に3分に近づき、今では2分57秒ぐらいになった。しかも箱根の険しい山上りがある中でのタイムということを考えれば、「世界に通用するランナーを育てる」という箱根駅伝の存在意義は、今十分に示されたと言っていい。

 歴史と伝統はもちろん大切だが、スポーツとしての革新も常に必要だろう。今回初めて試みた全国化を「なし」にする理由はない。チャレンジするかしないかは関東以外の各大学が判断すればいいことで、箱根としては「いつでもいらっしゃい」と門戸を開いておいた方がいいのではないか。そうすればいつか全く新しい大学が力をつけ、箱根駅伝のレベルは更に上がっていくはずだ。
(駅伝マラソン解説者)

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