【元横綱稀勢の里コラム】新十両昇進もまだまだ通過点 大の里がハラハラドキドキさせるのは師匠譲り(笑)

[ 2023年8月2日 07:00 ]

新十両に昇進し記者会見する(左から)高橋、二所ノ関親方、大の里(代表撮影)=愛知県安城市の二所ノ関部屋宿舎
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 おかげさまで、名古屋場所は所属力士19人中、15人が勝ち越しました。場所前の準備がしっかりできていて、いい形で初日を迎えられたこと。昨年から使用している宿舎の環境も良く、猛暑の中での体調管理もできていたことなどが要因に挙げられます。いい稽古といい環境。それがあれば力士は存分に活躍できます。田子ノ浦部屋から独立して2年。手応えも十分感じています。

 何といっても幕下上位の大の里、高橋がそろって新十両昇進を決めたことが最大のニュースです。2人は初土俵から育ててきた力士。今年の春場所で友風が十両復帰を決めていますが、その時とは違った感慨深さがあります。高橋は千秋楽の英乃海戦が素晴らしかった。立ち合いでもっていかれた時は心臓が止まりそうになりましたが、残してまわしをつかむと相手にはまわしを与えず逆襲。デビュー以来最高の内容でした。

 大の里は周囲の大きな期待を受けるなかでハラハラドキドキさせるのは師匠譲り(笑い)。そこはまねしなくていいところですが…。負けた理由も明確ですし、小兵力士に小手先で勝とうとするなど甘さも見えます。そんななかでも勝ち越せたのは次につながるのではないでしょうか。いずれにせよ、2人ともまだ通過点。今後の土俵人生を充実させるのは本人次第です。友風を加えて白まわしは3人。稽古場の雰囲気も変わります。幕下の力士は自分も…、の思いが深まるはずです。高橋、大の里の日体大の先輩、宮城や一度幕下上位で壁に当たった龍王らの「変化」にも注目しています。

 連日猛暑が続きますが、個人的には、力士は夏に強くなるというイメージを持っています。私も現役時代、浪岡(青森県)での地獄の部屋合宿を経て、ひと皮向けた記憶があります。それを機に大関昇進につなげることもできました。3日には幼少期を過ごした茨城県龍ケ崎市で夏巡業があります。初めて相撲を取ったのも巡業会場近くの公園。横綱として2018年の夏巡業に参加するなど縁の深い場所です。「原点」ともいえる龍ケ崎でこのたび部屋の力士全員が参加することになりました。部屋単位での参加はなかなか経験できないことですし、とても光栄なことです。若手力士には他の部屋の力士と稽古できる貴重な場。「飛躍の秋」につなげてもらえればと思っています。 (元横綱・稀勢の里)

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