誰も通ったことのない道程で五輪3連覇へ 金城梨紗子「どんな経験をできるか楽しみ」

[ 2022年10月16日 18:47 ]

レスリングフォーデイズ杯全日本女子オープン選手権最終日 ( 2022年10月16日    静岡・焼津市総合体育館 )

<レスリングフォーデイズ杯全日本女子オープン選手権>復帰戦で優勝し、インタビューに応じる金城梨紗子
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 非五輪階級となるシニアの部59キロ級で、五輪2連覇女王で東京五輪以来437日ぶりに実戦復帰した金城(旧姓・川井)梨紗子(27=サントリービバレッジソリューション)が、3試合を勝ち抜き優勝した。金城は五輪後の21年8月に結婚し、今年5月に第1子となる女児を出産。6月末に運動を再開し、7月中旬のマット練習再開からわずか3カ月ながら、圧倒的な強さを見せた。

 長女や夫の希龍さんら家族が見守る中で復帰戦を飾った金城は、「五輪以来の試合に戻り、懐かしいなという感情になったり、緊張もしたし、新鮮な気持ちだった」と笑顔で振り返った。東京五輪では妹の川井友香子との姉妹優勝で五輪2連覇を達成。「欲しいものは持っている」と、当初は競技生活を続行するつもりがなかったという。

 心境に変化があったのは妊娠中。大事を取って運動を控えたものの、妹の練習などを見ているうちに「緊張感が恋しくなった」。出産後の復帰希望を夫に伝えたところ、「“え、もういいじゃん”と言われた」と最初は拒否反応を示されたというが、最終的には「“好きなところまでどうぞ”と言われた。最終的には私のやりたいように後押ししてくれる。また支えられている」と感謝した。

 とはいえ練習再開時は思い通りにはいかなかった。出産を経て、体は大きく変化。「最初に練習した時は、大丈夫かな?と思うくらい。準備運動もままならないし。体が硬くなった場所もあった。目で追えても足が反応しなかったり」と、思い通りにならないことばかりだった。だからこそ「全く別の人間になったつもりで、作り上げていこうという気持ち」と新たな“レスラー金城梨紗子”をつくっていく覚悟で、日々練習に励んでいる。

 24年パリ五輪の最初の予選となる12月の全日本選手権は五輪階級の57キロ級でエントリーするとみられるが、同階級は9月の世界選手権を19歳の桜井つぐみが制覇。新しい世代の選手が着々と実力を付けている。五輪3連覇への道は平坦ではないが、「若い子がたくさん出てきているのは良いこと。どの五輪も同じ道のりはない。次のステージまでの道のりがどんなものになるか、自分がどんな経験をできるか楽しみ」と歓迎。既婚選手として、母親として、3連覇と2大会連続の姉妹制覇が懸かるパリへ、誰も通ったことのない道を、金城梨紗子が切り拓いていく。

 ▽金城梨紗子の復帰まで経緯
 ☆21年8月5日 東京五輪決勝でベラルーシ選手を破り2連覇を達成
 ☆同27日 元選手で福井・敦賀気比高コーチの金城希龍さんとの結婚を発表
 ☆22年5月10日 第1子となる女児を出産
 ☆同6月6日 女子日本代表の金浜良ヘッドコーチが、金城本人がパリ五輪出場に意欲を示したと明かす
 ☆同6月19日 明治杯全日本選抜選手権で五輪以来の復帰を果たした妹・川井友香子のセコンドを務める
 ☆10月16日 フォーデイズ杯全日本女子オープン選手権で437日ぶりに復帰し優勝

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