松島「前回以上のパフォーマンスを」 開幕あと1年フランスW杯で「5トライ&8強」どちらも超える

[ 2022年9月8日 05:31 ]

約1年ぶりの代表活動。別府合宿に参加する松島
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 ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会開幕まで、8日であと1年。日本代表の快足バックスの松島幸太朗(29=東京SG)がインタビューに応じ、自身3度目となる大舞台への思いを語った。史上初の8強入りを果たし、列島を「ONE TEAM」にした19年日本大会ではチーム最多5トライと活躍。開幕戦で宣言通りのハットトリックを決めた“有言実行の男”がフランスで掲げる公約とは。 

 約1年ぶりに桜のジャージーに袖を通した。松島は今夏の代表活動は右肩のケガで不参加だったが、今秋は5日から代表候補の別府合宿で始動。W杯まであと1年という区切りを新境地で迎えた。

 「新鮮。新しい(若手の)選手もいるのでコミュニケーションを取っていきたい。モチベーションはかなり上がっている」

 代表に選ばれれば3大会連続のW杯を30歳という節目で迎える。

 「わりと頑張っているという感じ。バックスリー(WTB、FB)って(3大会出場は)けっこう難しいイメージ。年齢を重ねるとスピードが落ちる問題もある。パフォーマンスが出るように体のケアを大事にしたい。そこ(来秋)でやめるとか全然決めてないけど、今まで経験したことを23年に出し切りたい」

 チームは現在の候補50人超を10月のオーストラリアA代表戦(非テストマッチ)までに約40人に絞る方針。

 「気持ちを改めて、ゼロからポジションを確保していきたい。練習からしっかりアピールする」

 W杯1次リーグでは世界ランキング5位のイングランド、同6位のアルゼンチンなどと激突。アルゼンチンは先月の南半球4カ国対抗で同4位ニュージーランドから敵地で初の金星を奪った。

 「難しいけど、ペナルティーでモールからトライされるのが一番嫌。(勝利の鍵は)ボールインプレーを長くするところなんじゃないかと。自分たちが走って相手FWを疲れさせセットプレーを避けることが大事」

 20年7月、サントリー(現東京SG)から、フランス1部リーグのクレルモンへ移籍した。昨季まで2シーズン、世界最高峰の舞台で通算45試合に出場。日本で過ごしていたら、最大でも通算30試合出場ほどが限度のところ、より多くの実戦機会に恵まれた。

 「この1、2年間でかなり多くの試合をこなし、圧倒的に経験値で余裕がある。19年W杯の時と比較したら全然違う」

 現地で過ごした時間はW杯を戦う上でもメリットだ。日本がW杯でベースキャンプ地とするトゥールーズはラグビーに熱狂的な都市。同じく別府合宿に参加中のフッカー日野剛志(静岡)が過去にプレーした土地という縁もある。1次リーグ2試合を同地で戦う日本にとって追い風だ。

 「環境に慣れているし、いろんな人と出会ったのでアウェー感はない。トゥールーズは味方になってくれる。日野ちゃんもプレーしていたし、(日本が)応援されやすい地域」

 私生活では昨年末、結婚と第1子誕生を発表した。家族の存在が力に変わっている。

 「自分が活躍することで家族も喜んでくれる。モチベーションは自然と高くなる」

 松島が不在だった7月のフランス戦は善戦するも2戦2敗だった。通算12戦未勝利(1分け11敗)で“金星へあと一歩”から壁を越えられない。

 「惜しくて負けるのがパターン化している。そこで勝てるのと負けるのでは経験値も違う。勝ちたい」

 19年は列島を熱狂させ、大会後は選手たちのテレビ出演ラッシュ。松島も数多くのタレントや芸人たちと共演を果たした。

 「けっこう会わせていただいた。小さい頃から見てる人とのテレビ出演はなかなかできることではない」

 ちなみに、松島の妻は人気ロックデュオ「B’z」が好きだという。W杯で再び躍進を遂げれば、松島との対面がテレビなどで実現するかもしれない。

 「今(この場で対面希望を)言うのはいやらしいと思うので(笑い)。自分の目標を達成した後にそれができればいいと思う」

 19年の快進撃は松島の有言実行から始まった。ロシアとの開幕戦前、サントリーで同僚だったCTB中村亮土(東京SG)とのやりとりで「俺は3トライ取る」と宣言。すると、ロシア戦でハットトリックを決め、あっさり達成。大会通算5トライはチーム最多で、8強入りに大きく貢献した。その快足ぶりにジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は「外からフェラーリが飛んでくるようなもの」と絶賛。福岡堅樹さんとの両ウイングは「ダブル・フェラーリ」の愛称も付いた。

 「僕は今(ブランドアンバサダーに就任した)ランドローバーなので(笑い)。(新愛称は)皆さんが決めてください」

 来秋も“有言実行の男”に期待がかかる。目標は8強の壁を撃破し自らは前回のトライ数を超える活躍だ。

 「シンプルに前回大会以上のパフォーマンスは出したい。そこに向けてピークをつくっていきたい。(有言実行)します!」

 ◇松島 幸太朗(まつしま・こうたろう)1993年(平5)2月26日生まれ、南アフリカ出身の29歳。父がジンバブエ人で母が日本人。6歳でラグビーを始め、桐蔭学園高3年時に全国大会制覇。卒業後、南アのシャークス育成機関に2年在籍し、13年秋にトップリーグのサントリー(現リーグワン東京SG)入り。14年5月のフィリピン戦で代表初キャップ。15、19年W杯に連続出場し、全9試合に先発。20年7月にフランス1部リーグのクレルモンに移籍し、2シーズンをプレー。代表通算44キャップ。1メートル78、87キロ。ポジションはWTB、FB。

 《ジョセフHC期待“シン・マツシマ”》ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは、フランスから戻ってきた“シン・マツシマ”に期待を寄せている。国内リーグとは異なる舞台で鍛錬した2シーズンを「新たな環境でプレーし、慣れていくことは挑戦だったと思うがプロフェッショナルにプレーしていた」と評価。今秋は19年W杯同様にWTBとして起用する方針だが、その席が確約されているわけではない。指揮官は「パフォーマンスを発揮してポジションを獲らないといけない。今後の活躍が楽しみだ」と、さらなる奮起を求めた。

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