4回転半がある未来へ 羽生結弦が歩む不屈の道

[ 2021年10月21日 16:30 ]

4月17日、世界国別対抗戦のエキシビションに向けた練習で4回転半にアタックした羽生結弦(撮影・小海途 良幹)
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 小海途良幹は、その表情を見て撮影のポジションを変えた。滑走スピードが普段より速いと感じた大和弘明は、ペンを握る手が震えるのを認めた。

 今から半年前の4月17日、丸善インテックアリーナ大阪。フィギュアスケート世界国別対抗戦のエキシビジョンに向けた練習でのことだった。

 14年ソチ、18年平昌と五輪連覇の羽生結弦(ANA)が、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑んだ。計12度のトライ。回転が抜けた他に、6度の転倒があった。

 さかのぼること約1年4カ月。19年12月、GPファイナルのフリーに向けた公式練習でも成功はなかった。

 「8分の1回れば立てますね、間違いなく」。今年3月末に羽生が残したコメントだ。前人未到の超大技へ、確かな手応えがあった。だからこそ、国別練習翌日の4月18日に言った。「全然、良い時のジャンプにならなかった。もっと良いです、本当は!」。そして、続けた。「めちゃくちゃ悔しかった」と。

 春から秋へ。季節が巡った今、正確な現在地は羽生だけが知る。 有力選手が集うグランプリ(GP)シリーズが22日(日本時間23日)のスケートアメリカで始まる。羽生はNHK杯(11月12日開幕、東京)とロシア杯(11月26日開幕、ソチ)にエントリー。先日、最新のコメントが届いた。

 羽生がテーマに選んだのは「できること、一つずつ。」だった。 「自分の中ですごく大切にしている言葉のひとつで、自分が今まで出会ってきた言葉の中でも、凄く大切にしている言葉です。今まで『進化』とか『挑戦』とか言ってきましたが、毎日出来ることは違うし、苦しんだり、楽しかったり、幸せを感じたり、悲しみを感じたり、いろんな感情がありますが、できることを一つずつ丁寧に積み重ねていきたいと思っています。自分の一番の目標は4回転半を成功させたいということなので、そこに向かって今、全神経と全気力を使ってる感じです」

 何度、氷に体を叩きつけられようとも立ち上がり、また跳んでいるのだろう。失敗を成功に変える、理想のバランスを求めて。

 コンディションがいい日もあれば、悪い日もあるだろう。その日できることに全力を尽くす。不可能は可能になると信じて。

 きっと今、この瞬間も、リンクの内外で全てを注ぎ込んでいるに違いない。

 4回転ルッツと4回転半の基礎点の差は、わずかに1点。ハイリスク・ローリターンな現状を知った上で、譲れない究極の目標を追う。

 天高く舞い、鮮やかに地へ。

 不屈のアタックが実を結ぶ瞬間は、確実に迫っている。
(杉本 亮輔)

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