照ノ富士 史上9人目の新横綱優勝 17年春場所の稀勢の里以来、一人横綱では戦後初

[ 2021年9月27日 05:30 ]

大相撲初場所千秋楽 ( 2021年9月26日    両国国技館 )

正代(右)を攻める照ノ富士。寄り切りで下す
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 新横綱・照ノ富士が13勝2敗で2場所ぶり5度目の優勝を果たした。1差の平幕・妙義龍が先に敗れて賜杯の行方が決まり、結びで大関・正代を寄り切った。新横綱の優勝は17年春場所の稀勢の里以来で史上9人目だが、新横綱場所で一人横綱を務めた力士のVは1911年夏場所の太刀山以来110年ぶりで戦後初。白鵬の休場で重圧を一身に背負いながら、序二段から奇跡的な復活を遂げた精神力と力量で最高位の責任を果たした。

 最後まで気持ちを緩めることはなかった。西の控えで戦況を見守った、結び2番前。1差で追う妙義龍が敗れて優勝が決まっても、照ノ富士の気合は変わらなかった。「最悪3番でも取る気持ちで来ていた。相撲に絶対はない」。本割後の優勝決定戦だけでなく、その取り直しまでも想定し、最後まで責任と向き合った。

 強烈に当たり、左前まわしを引いて正代の腰を浮かせると、相手の右巻き替えに乗じ、力強く寄り切った。新横綱場所で賜杯を抱くのは9人目だが、初日から最高位を1人で務めて優勝するのは戦後初。「ほっとした。引っ張っていかないといけない、と思っていた」と明かした。

 古傷の両膝は常に限界に近い状態だった。12日目の明生戦で敗れた後、左脚を気にした。関係者によると終盤戦に「今場所は長い」と支度部屋でこぼしたという。それでも朝稽古を休まず、連日汗を流した。部屋付きの安治川親方(元関脇・安美錦)は「全てを受け入れる覚悟ができている」と評した。

 4年前の春場所。手負いの新横綱・稀勢の里(現・荒磯親方)に千秋楽の本割、優勝決定戦で連敗して逆転優勝を許した。膝の不安を隠せなかった当時とは別人のような精神力を披露。昇進伝達式で述べた口上の「不動心」を体現し、トップを譲らなかった。八角理事長(元横綱・北勝海)は「立派な横綱。堂々としていた」と称えた。

 21年は5場所で3度の優勝。13日目には史上最速で年間最多勝を決めた。近年は上位陣が不安定で平幕優勝が続出するなか、抜群の安定感を誇る。20代最後の闘いになる九州場所(11月14日初日、福岡国際センター)に向け「土俵人生はいつ何が起きるか分からない。精いっぱいやっていきたい」と決意を示した照ノ富士。大関から序二段まで転落しながらはい上がった第73代横綱は、新たな相撲道も心を乱さず突き進む。

 【照ノ富士に聞く】
 ――新横綱優勝を果たした心境は。
 「一生懸命やって良かったなと思う」

 ――重圧はあった?
 「そういうのを感じてもしょうがないので、その日の一番に全力を懸けて土俵の上で一生懸命やっている姿を見せられればいいと思っていた」

 ――師匠を超える5度目の優勝となった。
 「師匠を超えたという気持ちは全くない。いくら優勝して、いくら強くなっても、師匠を超えることはできない」

 ――新横綱優勝で、これまでと違う喜びはある?
 「優勝が本当に難しいというのは、いろんな場所で感じていたので、優勝すること自体が本当にありがたいこと」

 ▼荒磯親方(元横綱・稀勢の里) 大関から序二段に落ちて、そこから新横綱になって優勝したことは本当に立派。(親方自身の新横綱優勝決定時の対戦相手が照ノ富士で)悔しさは相当なものだったはず。あの時から「次は俺だ」と、ずっと腹の中で思い続けていたのだろう。

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