高野進氏 自身の弱点分析、持ち味の「飛び出し」で勝利つかんだ多田

[ 2021年6月25日 22:52 ]

<陸上日本選手権>男子100メートル決勝、初優勝を果たし、ガッツポーズの多田修平(撮影・北條 貴史)
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 【高野進の目】多田はこれまで後半が課題だったが、今回は30歩くらいまで頭を完全に上げず、ただ一人トップスピード区間を後半に持っていっているように見えた。飛び出しでそう簡単に追いついてこないと想定して低く長く、他の選手の2倍の加速区間になる60メートル過ぎでようやく顔を上げた。これはあの飛び出しがあるからできる技。他の選手と体を起こして競り合う場面を極力つくらせない、最後の減速が弱点だった多田が勝つにはこれしかなかった。

 9秒95のレースの再現を狙った山県は悪くなかったが、抜群に良いわけでもなかった。じわじわ追いつけば力むことなくロックオンして最後は抜き去る走りができるが、今回は射程距離におけなかった。追いつけずに固くなって足の運びも乱れ、気付いたら3着。ただ、これからピークが来て五輪で9秒台を狙うプランが立てやすくなるのではないか。

 明暗が分かれた桐生は完全に負傷の影響があった。アキレス腱の痛みでは全力で接地できない。サニブラウンは全然仕上がっていない、準備不足な印象。大きなエンジンを持っているし才能があることは分かっているが、車で言えばオイルも交換して動かさないと走れない。ともにあの舞台で戦うには万全でないといけなかった。(男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)

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2021年6月25日のニュース