IOCや日本政府への怒りがアスリートに向くのは筋違い

[ 2021年5月8日 05:30 ]

池江璃花子
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 【記者の目】白血病から復帰した池江は注目度の高さゆえに、五輪延期決定後は主催者側から大会開催の“救世主”として期待されてきた側面がある。昨年7月23日の開幕1年前イベントでは聖火をともしたランタンを掲げ、メッセージを発信。五輪代表に内定直後にはIOCのバッハ会長からツイッターで祝福された。

 劇的復活が感動を呼ぶ半面、ネット上で池江の記事に付随するコメントには「五輪に利用されている」など批判的な言葉がつきまとい、ツイッターでは「#池江璃花子選手は立派だが五輪開催は断固反対」のハッシュタグも飛び交った。自身の体調と向き合いながらのレースや練習の負担は大きい。その上で自身の努力を否定する批判が耳に入る状況が、いかに苦しいかは想像に難くない。

 注目を浴びることを前向きに捉えて折り合いをつけてきたが、今回ばかりは周囲の反応に黙っていられなかったのだろう。中止や再延期の民意を無視したIOCや日本政府の強硬姿勢に対する怒りの矛先が、池江に向くのは筋違いだ。アスリートをも傷つける開催に意義を見いだせるのか。再び問い直す必要がある。(競泳担当・木本 新也)

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