森会長の“舌禍事件” JOCに力があれば防げたのではないか 存在意義すら危ぶまれ…

[ 2021年2月6日 07:30 ]

JOCの山下会長(左)と森組織委会長
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 【記者の目】JOC山下会長の対応が及び腰に見えるのには理由がある。「今のJOCには何の力もない」ということだ。

 JOCは元々、日本体育協会(現日本スポーツ協会)の中にある一委員会にすぎず、80年モスクワ五輪の際には補助金のカットをちらつかせる政府の圧力に負けてボイコットを余儀なくされた。その反省から89年に財団法人として独立し、民間主導での自主財源確保に乗り出した。

 ところが当時絶大な権力を誇っていた堤義明会長が05年に証券取引法違反で逮捕されると、流れが一変。入れ替わるように同年、日体協会長に就任したのが森氏だった。

 ちょうど時代はバブル崩壊、リーマン・ショックと続き、強化費の財源は再び民間から国費主体へと逆戻りする。しかもJOCから各競技団体に分配されていた補助金で不正が次々と発覚し、ついに15年には強化費の分配を日本スポーツ振興センター(JSC)へ移管されてしまった。

 強化費を取り上げられたJOCは存在意義すら危ぶまれるようになり、今回の東京五輪でも何の役割も果たせなかった。本来ならJOCが率先してIOCとの調整を行うべきなのに、打ち合わせの場に山下会長が呼ばれることすらない。JOCがもっとしっかりしていれば今回のような“舌禍事件”も起きなかったのではないかと思うと、今更ながら残念でならない。(編集委員・藤山健二)

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2021年2月6日のニュース