桃田賢斗を奮い立たせた指導者の言葉「苦しい状況を乗り切れる男にしかこういう状況は来ない」

[ 2020年12月23日 12:11 ]

バドミントン全日本総合選手権第2日 ( 2020年12月23日    東京・町田市立総合体育館 )

桃田賢斗
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 男子シングルス1回戦で世界ランキング1位の桃田賢斗(26=NTT東日本)は森口航士朗(埼玉栄高)から2―0で勝利。順当に2回戦に進んだ。桃田が公式戦のコートに立つのは今年1月12日のマレーシア・マスターズ決勝以来346日ぶりとなった。不慮の交通事故を乗り越え、悲願の東京五輪金メダルへ再び動きだした。

 桃田は波瀾(はらん)万丈なアスリートの1人だ。福島・富岡高(現ふたば未来学園高)1年時、インドネシア修業中に東日本大震災が起こる。海外修業中のため被災こそ免れたが、その後は同高の拠点変更など苦労を重ねた。活躍が期待された16年リオデジャネイロ五輪直前には違法賭博問題が発覚。日本協会から無期限の競技会出場停止処分を受け、1年ほど表舞台から消えた。

 数奇な運命をたどる桃田は、今度は交通事故で負傷。右目の眼窩(がんか)底骨折の手術を受け、2月29日にNTT東日本の練習に復帰した。静養が明けて練習再開前には同チームの須賀隆弘総監督と複数回、話し合った。指揮官は過去の出来事を踏まえ、こんな言葉を掛けたことを覚えている。

 「昔いろんなこと、辛いことがあって、1つ1つ乗り越えてやってこれたというのは、努力もそうだけど、バドミントンに対する気持ちや思いが強かったから、ここまで来られたよね。ああいうことを乗り切れたんだから、今回のこと(事故)も乗り切れたんだと思う。こういう苦しい状況を乗り切れる男にしか、こういう状況は来ないよ。乗り切れる男だからこそ、こういう状況は来たんじゃないかな」

 桃田がフットワークや羽根打ちなど地道な練習を繰り返しながら勝負のコートを目指す中、東京五輪延期や、度重なる復帰戦の変更もあった。だが、現状を受け入れた桃田に焦りはなく、黙々と努力を重ねていたという。「絶対、復帰できますよ」。「毎日バドミントンが楽しい。だから、その積み重ねです」。復帰にいたるまでの長期間、桃田からは前向きな言葉が聞けたという。起きたことを悔いるのでなく、今できることを精いっぱい。その積み重ねが、この日につながり、未来への礎となる。

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2020年12月23日のニュース