ホッケー女子・湯田葉月が「UDN SPORTS」と契約「とりあえず行動したいタイプ」単独インタビュー
アスリートのマネジメント事業を中心に活動する「UDN SPORTS」は22日、女子フィールドホッケーの湯田葉月(31=コカ・コーラレッドスパークス)とマネジメント契約を締結したと発表した。スピードを生かしたドリブルとボールさばきを武器に、現在は東京五輪に出場する日本代表「さくらジャパン」候補に選出。女性アパレルブランドでモデルを務めるなどマルチに活躍する異色なアスリートでもある。この日までにインタビューに応じ、今後の展望やコロナ禍での取り組み、東京五輪に向けた思いなどを語り尽くした。
――UDNと契約した経緯や今後の活動は。
「ホッケーはマイナーなスポーツなので、ホッケーの良さや楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたかった。また、UDNが社会貢献をしているので、一緒にやっていきたいと思いました。社会貢献についてはまだビジョンはないんですが、子どもたちに対してのクリニックなどに凄い興味がある。今後やっていきたい。いろんな競技の選手が所属しているので、違う競技とコラボしていくのも面白いと思います!」
――ホッケー界を盛り上げる自覚は。
「ホッケーを認知させていくためには、誰かがメディアに出たり、いろいろな発信をしていった方が一番いいと思っています。まずは自分ができることをやっていきたい。ホッケー界は受け身というか、あまり自分たちから発信していかないと思っていて、もったいないと感じている。面白いスポーツなので、見たら絶対に“このスポーツ面白いやん!”となってくれると思う。まずはホッケーに触れる機会を増やしていきたい」
――来夏の東京五輪は認知してもらうきっかけになる。
「五輪が東京で開催されるのは凄いこと。私たちのホッケーを知ってもらうチャンスでもある。試合では結果を残して、ホッケーもあると知ってもらいたい」
――コロナ禍で練習ができない状態だった。さくらジャパンの現状は。
「また年明けから新しい監督(チャビ・アルナウ氏)になる。選考し直しで、選考会から始まる。私たちもどんな感じなのかなと。どんなホッケーをして、どんな監督なのか初見なので楽しみではありますね」
――その選考をどう捉えているか。
「ゼロからですよね。監督によってもタイプが違う。また一からかなと感じがします。けれど、チーム的にはこれまでみんなで4年間、積み上げてきたものもある。そこをしっかり生かしながら、やっていけたらいいなと思います」
―コロナ禍での練習は。
「コカコーラ所属なんですけど、ホッケーできない時期が2カ月くらいあった。チームとして活動できる時間がなくて、各自ランニングであったり、筋トレを家で出来る範囲で。たまに、みんなでズームでトレーニングしたりとか。本当に2カ月間はチームの行動ができなかった」
――モチベーション低下はなかったのか。
「モチベーションを上げようともしていなかった。下がることもなかった。仕方がないというか、コロナの状況なので。どうしようもないし、ホッケーができないとか五輪の延期は、私たちにはどうしようもないことなので。それを受け止めて、今何をすべきか、何ができるかを考えてずっとやっていました」
――逆に、コロナ禍でできたトレーニングは。
「みんなでいつも練習している分、1人で練習すると飽きちゃうんですよね。ズームとかを使って、みんなでヨガをやったり。いつも取り入れないことをやることで、リフレッシュにもなったり。トレーニングとしてももちろん、気分転換とかも入れていきながら工夫しながらやっていた」
――自身が初出場となったリオ五輪は10位。どんな大会だったのか。
「試合に勝てなかったので、毎試合悔しかった。でも、楽しかった部分もあった。(当時世界ランク2位の)アルゼンチンはブラジルと距離が近いので、応援が凄いんですよ。日本でホッケーはマイナーなので、まずブーイングされないんですけど。思いっきりブーイングされて…。会場が揺れるくらいジャンプしていたので。すごいな、これがブーイングかと…。ここまで来られたんやな、という思いと、それだけ注目される中で自分たちが試合できるのがうれしかった。私たちは試合期間が長いんですが、選手村にある掲示板に“今日は誰が金メダル獲りました”というものが並んでいくんですよ。例えば柔道だったり、短い期間でパンパンパンとみんな金を獲ってくるので。それを見るのがプレッシャーというか、いいなあという思いや悔しさもありました」
――それから4年間の歩みは。
「本当にいろんなことがあった。まずリオが終わって、新しい監督になる時、主将を決めるときにまず自分から立候補してやりたいと。全然キャプテン・キャラではないんですけどね。リオで負けたのが、凄い悔しかったので。次は絶対勝たせたいと思って立候補した。その時もうまくいくことばかりでなく、人としても成長できた。足りない部分が分かった。その後に18年W杯のメンバーから落ちてしまったり、挫折も経験して。右膝の前十字じん帯断裂も乗り越えられた。いいことも悪いこともあった。思い返すと濃かったと思う」
――なぜ主将に立候補したのか。
「年齢が上の選手が多く抜けてしまったのと、外国人監督が初めてだったので。チームとして受け身じゃないですけど、新しいことを入れていくのは抵抗がある感じだったので。私がどんどん先頭に立って、新しいことに取り組んでいきたいなと。とりあえず行動したいタイプなんですね(笑い)」
――ロンドンでの18年W杯の落選については。
「事前の遠征に行っていて、ベルギーでメンバーが発表されて。そこで落ちて、飛行機で2人で帰るっていう酷な…。飛行機の中は考えごとしながら寝られずに帰りました」
――その後、右膝の前十字じん帯断裂もあった。
「W杯が終わって、日本で4カ国大会があった。その前日の米国との練習試合で。18年9月。手術して、ゆっくりめで8カ月かかった。19年春から代表に戻った」
――出場すれば自身2度目の東京五輪はどんな大会にしたいか。
「大きな目標はもちろん。そこで結果を残して、自分自身、チームとして絶対に活躍するんだという強い気持ちを持っている。東京開催ということで、リオとかより多くの人に見てもらえると思うので楽しみではあります」
――東京五輪のグラウンドに立つイメージは。
「グラウンドに立ったらやるだけです。細かいことは一切考えず、集中して自分のプレーとチームのために」
――東京五輪は集大成なのか。
「東京五輪は大きな目標だけど、そこが最後ではない。チームの試合も続きますし、もしかしたらどこでやるか分からない。その時も楽しみ。生涯現役はわからないけど、やれるところまでやりたい」
――ホッケーを始めたきっかけ
「テニスをやっていたのですが、中学生の時の体験入部でやってみて、それまでホッケーという競技を知らなかった。やってみたら凄い難しくて、全然できなくて…。それが逆に楽しくて、もっとうまくなりたいと思って、そこからやっています」
――ホッケーの魅力
「他の競技にないスピード感が一番。ボールスピードも速くて、シュートなら150~160キロくらい。当たった時は、アザならいい方です。当たったら全体的に青くなります…」
――楽しさを感じるのはどんな瞬間か。
「点決まった時、チームが勝った時が一番うれしい。それが自分が獲った得点でなくても、チームでつないでとった1点ならうれしい」
――自らはどんなプレーヤー?
「年々プレースタイルが変わってきた。今はパサーですね」
――UDN所属の香川真司選手のようなイメージか。
「そうですね…そうなれたらいいですね(笑い)」
――憧れ、影響を受けた選手は。
「(柔道男子で五輪3連覇の)野村忠宏さんが同じ大学の先輩。大学2年の時に一旦、ホッケーを辞めた時期がありまして。野村さんが現役の時に。“もう一回復帰しようか迷っています”と相談をさせてもらって。“今若いんやし、何でもやったらいいんちゃう”とアドバイスを頂いて。背中を押されました」
――ホッケーから離れ、復帰を果たす。
「一回離れたかったんですね。オーストラリアに留学して、世界が広がったんですけど。その時にロンドン五輪の予選が日本であり、その試合を見て、五輪を目指すと決めました」
――オーストラリアのチームに所属した時期もあるが、その経験が生きたものはあるか。
「オーストラリアはホッケーが強い。クラブチームでもうまい選手もたくさんいた。日本とは違った形で純粋に楽しかった。体格も大きい。その時はFWをしていて、結果を求められて、結果にこだわった。1試合1点とか。今はしっくりくるのはMFですけど」
――自身の売りは
「スピードが売り。そこを生かしたプレー」
――ちなみに、7月生まれなのに、なぜ「葉月」という名前なのか。
「フライングしたみたいです(笑い)。もともと8月に生まれる予定だったんですが、7月に生まれてしまい、(名前は)そのままでいいかという形で」
――今後はどのようなホッケー界になってほしいか。
「結果を残すことが一番。そこはみんな意識している。今は日本でプレーしている選手ばかり。海外で活躍する選手が多くなればいいかなと思っています。私も海外に憧れている。ヨーロッパ、オセアニアが強いので。何人かは行っていますが、ルートができていない」
――最後に、ホッケーを知らない人たちへメッセージを。
「ホッケーをまず見てもらいたいです。東京五輪だったり、東京で試合がある時でもいいですし。スタジアムを満員にするくらい来てほしいです!」
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