内村航平、予選から全開「最高点と思う、世界でも」 H難度成功でスーパースコア

[ 2020年12月12日 05:30 ]

体操 全日本選手権第2日 ( 2020年12月11日    群馬・高崎アリーナ )

H難度のブレトシュナイダーを決める内村航平(代表撮影) 
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 個人総合と種目別の男子予選が行われ、内村航平(31=リンガーハット)は、来夏の東京五輪で金メダルを狙う鉄棒で15・533点をマークし、断トツで13日の決勝に進出した。H難度「ブレトシュナイダー」を決めるなどミスなく演技を完遂し、現行の採点基準となった17年以降で破格のハイスコア。個人総合は初優勝を狙う萱和磨(24=セントラルスポーツ)が86・899点でトップに立った。

 自身を“長老”と形容するほど長いキャリアの中で、味わったことがない感覚だった。「ここまで予選に合わせられたのは、人生で初めてくらい。ちょっと自分でも驚いている」。鉄棒の15・533点は、現行の採点基準となった17年以降で「過去最高点と思う、世界でも」と自賛。「まあ、うれしいですね。ちょっと出過ぎかなと思うけど」。にやける内村の表情が、手応えを物語っていた。

 H難度のブレトシュナイダーは予選では回避するはずだったが、佐藤コーチの「(難度を)落としてやっても意味なくないですか?」という言葉で投入。9月の全日本シニア、11月の国際大会を上回る出来で大技を決めるとカッシーナ、コールマンと離れ技を成功。「体力的なしんどさが一気に来た」と着地はわずかに一歩、動いたものの、演技を終えると両拳を突き上げた。

 わずか1分の演技の前に、入念な準備がある。サブ会場での最終調整では、鉄棒を含む全6種目で汗を流し、2時間かけて全身の筋肉に刺激を入れた。世界大会8連覇を成し遂げた個人総合モードの仕上げが、スペシャリストとしての新境地を開く。「軽いゾーンというか、久々に体験できた。自分で動かしているけど、勝手に動いていた。着地して、ようやく現実に戻った」と振り返った。

 ただ、この演技でも自己採点は100点満点には程遠い。「65点。着地が止められていない。成功させたい気持ちがまだ強い。もうちょっと余裕を持って演技をしたいという希望がある」。13日の決勝では3年ぶり5度目となる鉄棒の日本一が懸かるが、タイトルは通過点に過ぎない。「次はもっともっと、と期待される。しっかり決勝に合わせたい」。予選を超えるスーパースコア、そして東京五輪へ、キングが突き進む。 

 《値する演技》17年以降の世界選手権では、18年のゾンダーランド(オランダ)の15・100点が最高。日本協会の遠藤常務理事はW杯の得点を全て調べるのは困難で「確信は持てませんが」とした上で「得点的には世界最高得点に値する演技だったかと思います」とコメントした。内村は鉄棒専念後、9月の全日本シニアが14・200点、11月の国際大会が15・200点。宮地は全日本シニアで15・366点をマークしていた。

 ▽東京五輪への道 団体総合の枠は4だが、内村が狙う種目別では出場枠はまだ確定していない。内村が出場しない来年の個人総合W杯シリーズ、アジア選手権に出場する日本選手が、個人の国別出場枠を獲得するのが第一条件。個人枠は最大2で、日本協会の五輪代表選考基準も決定していないが、来春からの国内選考会で争う。

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