記者が語る五郎丸という男 精度以上に驚いたタッチキックの飛距離

[ 2020年12月10日 05:30 ]

ラグビー15年W杯代表、五郎丸歩 TL新シーズン限りで引退

早大4年の08年、日本一に輝き涙を流しながら「荒ぶる」を歌う五郎丸(右端)ら
Photo By スポニチ

 早大1年時からスター選手だった。正確なゴールキックで何度も重要な勝利の立役者となった。だが、五郎丸をヒーローにした記事を書いた記憶がない。

 たぶん、高精度で決めるキックも彼なら当たり前で、特別な活躍ではないと決めつけていたように思う(五郎丸以降、日本人キッカーに要求されるレベルは確実に高まった)。愛想が良いわけではなく、活躍を誇るようなコメントも口にせず、ゴールよりも「FWを前に出せた」と話す方がうれしそうだった。

 個人的にも、タッチキックの飛距離に驚かされた印象がある。ロングキック一発で自陣ゴール前から敵陣へ入り、中盤からは一気にゴール前へ迫ってラインアウト→モールでトライに結びつける。強力FWが整備された当時の早大のスタイルにも合致し、チームメートからも「無理にパスを回さなくてもキックで前へ行ける」との声が聞かれた。

 1月のトップリーグ開幕戦。対戦相手の外国人選手より距離が出ないタッチキックに寂しさを覚えた。「飛距離落ちましたよね」。チームスタッフがポツリとつぶやいた。(03~06年ラグビー担当・中出 健太郎)

続きを表示

2020年12月10日のニュース