正代、立ち合いを変えて飛躍 令和の土俵にニュータイプの大関誕生

[ 2020年9月30日 05:30 ]

「正代 火の国大関」(下)

時津風親方(左)と正代
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 14年2月、東農大OBである師匠の時津風親方(元幕内・時津海)や先々代師匠の元大関・豊山も在籍した時津風部屋への入門を表明した。2年次に学生横綱となった実力をいかんなく発揮し、前相撲デビューながら、初土俵から所要9場所で新十両昇進を決めた。

 その会見で出た「誰とも当たりたくない」というネガティブ発言。真相は「やりたい力士もいれば、やりたくない力士もいた。当分、相撲のことを考えたくないという時の会見だったから」。心の準備ができてなかったため、緊張のあまり本意ではない言葉になってしまった。

 緊張はしながらも16年初場所で新入幕を果たし、1年後の17年初場所では新三役昇進を果たした。だが、上位の壁は厚かった。三役で一度も勝ち越せずに長らく平幕生活が続く。そして19年秋場所では5日目から9連敗という屈辱を味わった。これが転機となった。

 思い知ったのが「立ち合いの重要性」。小学校時代は頭から当たっていたが「同級生より体が大きかったので合わせると前のめりになった」という理由から、中学からは胸から当たるようになった。プロではタイミングをずらして差しにいったが「当たってから差しにいくと後手に回る相撲が多くなる」と痛感。昨年九州場所で体ごとぶつけていく立ち合いに変えたことが飛躍のきっかけになった。

 その場所で11勝を挙げると、今年初場所では優勝争いを展開。筋力トレーニングで体が大きくなったことで圧力も増した。春場所で3年ぶりの三役復帰を果たし、あれよあれよという間に初優勝と大関の座を手に入れた。「信じられない」と自身も驚く躍進だ。

 「自分には自分に合った相撲がある」。体の柔らかさを生かし、上体を反らしながらも前に出ていける取り口は誰にもまねができない。令和の土俵にニュータイプの大関が誕生する。 

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2020年9月30日のニュース