涙の初賜杯!正代、大関昇進確実 熊本出身では初の優勝 「生きた心地がしなかった。無我夢中」

[ 2020年9月28日 05:30 ]

大相撲秋場所千秋楽 ( 2020年9月27日    両国国技館 )

大相撲秋場所千秋楽で初優勝を決め、賜杯を手に笑顔を見せる正代(代表撮影)
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 関脇・正代(28=時津風部屋)が13勝2敗で初優勝を飾り、大関昇進が確実となった。1差で追っていた新入幕の翔猿(28=追手風部屋)に土俵際での突き落としで勝ち、逃げ切った。優勝制度ができた1909年(明42)夏場所以降、熊本県出身力士の優勝は初めて。審判部は正代を大関に推薦することを決め、30日に開かれる11月場所番付編成会議と臨時理事会を経て正式決定することになった。

 結びの取組が終わって勝ち残りの土俵下から引き揚げると、花道で感情を抑えきれなくなった。「付け人の目が潤んでいるのを見たらきた。(部屋付きの)井筒親方(元関脇・豊ノ島)が後ろにいて、涙が止まらなくなった」。取組からしばらくして感慨に浸った。

 勝てば優勝が決まる翔猿戦。極度の緊張に襲われた。前夜は午前0時に布団に入ったが「最後に時計を見たのが5時」と寝付けなかった。目をつぶると「悪い体勢のイメージが消えなかった」。大一番はネガティブな気持ちと同じ展開。立ち合いで当たれずに攻められ、逆襲したところでいなされ、もろ差しを許した。だが負けなかった。「生きた心地がしなかった。無我夢中。なんとかしようと動いて、たまたま決まった」。諦めない気持ちが初賜杯につながった。

 三役で3場所32勝と目安に1番及ばなかったが、審判部は正代の大関昇進に関する臨時理事会の招集を八角理事長(元横綱・北勝海)に要請した。過去に臨時理事会を開催して昇進を見送られたことはなく、大関・正代の誕生が決まった。「憧れの地位でもあるし、責任のかかる地位。(それ以外)パッと思いつかないけど上がれたらうれしい」と二重の喜びに浸った。

 心技体の充実。その礎は「体」だった。弟弟子で弓取りを務めている幕下・将豊竜らから勧められ、今年に入って初めてサプリメントを摂取。ビタミン系を中心に服用し、疲労回復につなげた。新商品が出るとすぐに購入するほどのアイスクリーム好きで、血糖値が高くなる傾向にあったが、病院を替えたことで数値も安定した。

 「体」の不安がなくなり、初場所で初めて優勝争いを繰り広げた。賜杯には届かなかったが、緊張感の中で闘い続けたことで「心」の糧となった。7月場所も千秋楽まで優勝争い。「15日間ペースを乱さないことや気持ちの持っていき方。経験が生きた」。「心」を乱さずに取り切ったことで、最大の武器である右差しからの「技」が猛威を振るった。

 修羅場をくぐり抜けたことで自信がついた。「同じ場面に遭遇しても、今日よりは追い詰められないと思う」。11月場所は看板力士として堂々とした相撲を披露する。

 【正代直也(しょうだい・なおや)】
 ★生まれ 1991年(平3)11月5日生まれ、熊本県宇土市出身、28歳。
 ★サイズ 1メートル84、174キロ
 ★得意 右四つ、寄り
 ★学業優先 熊本農から東農大に進学。大学2年時に学生横綱となり、幕下付け出しの資格を得たが卒業を優先させ権利は失効。
 ★スピード出世 時津風部屋に入門し、14年春場所に初土俵。15年秋場所で十両に昇進し、16年初場所で新入幕。初土俵から所要17場所で新関脇に昇進は年6場所制となった1958年以降で史上2位タイ(幕下付け出しを除く)
 ★超ネガティブ 新十両会見で対戦したい力士を問われ「できれば誰とも当たりたくない」と発言。
 ★受賞歴 殊勲賞1回、敢闘賞6回。金星は17年名古屋の日馬富士戦の1個。
 ★趣味 映画観賞、漫画
 ★愛称 ショーダイ、ナオヤ、マサヨ
 ★家族 父・巌さん、母・理恵さん、姉と弟。ちなみに祖母は正代正代(まさよ)さん。

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