日本トップ選手の新国立の感想は? 観客目線の快適さにも注目

[ 2020年8月25日 10:30 ]

セイコーゴールデングランプリ陸上男子100メートルで優勝した桐生祥秀(左から2人目)。右は2位のケンブリッジ飛鳥(代表撮影)
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 国立競技場の完成から約8カ月の月日が経過した8月23日、陸上競技としては初の競技会となるセイコー・ゴールデングランプリが行われた。新たな競技場で選手が特に気にするのが実際に走るトラックの硬さや感触だ。高い反発力を生み出すトラックは好記録のカギになるため、選手たちは入念に確認していた。日本トップ選手が新国立を走り初めした感想は?

 短距離には男女の国内トップ選手が一堂に会し、トラックの性能や実際に走った感想を聞くには絶好のタイミングだった。男子100メートルで2位に入ったケンブリッジ飛鳥(27=ナイキ)はレース後に「競技場の雰囲気も良い。トラックも走りやすくて、良いなと思いました」と率直に語った。

 女子100メートル障害で優勝した日本記録保持者の寺田明日香(30=パソナグループ)は「技術が伴っていないので使いこなせなかったが、反発があって走りやすかった」と話し、男子200メートルを制した飯塚翔太(29=ミズノ)も「硬いけど跳ねる感じ。しっかりと反発はもらえる」と、短距離勢にはおおむね好評だった。

 フィールド種目の選手も好感触を口にしていた。男子走り高跳び日本記録保持者の戸辺直人(28=JAL)は「タータンは硬め。走りやすいというか、助走を頑張らなくても進むという感じでした」と話した。会場についても「スタジアムはとても大きくて、観客が入ればすごく盛り上がる感じがしました」という。

 新国立のトラックに好印象を抱く選手が多い中、男子110メートル障害日本記録保持者の高山峻野(25=ゼンリン)は「走りやすいとは言えないかな。硬すぎず、柔らかすぎず。スピードがなかなか出ないトラックだなと思いました」と独自の視点で分析。同100メートルの小池祐貴(25=住友電工)は「結構硬くてスピードが出やすい」としたが「接地時間が短くなりがちだと思う、1本2本走れたので、ある程度は大きいレースがあるときのイメージはできた」と難しさも口にした。

 トラックだけではなく、来夏の猛暑を想定して観客目線でスタジアムの快適さにも注目した。

 記者は大会前日の22日、当日の23日と2日間にわたり会場に足を運んだ。特に22日は正午の時点で気温35度の猛暑日。午前中でもJR千駄ケ谷駅から国立競技場までの移動だけで汗だくになり、頭もぼーっとした。

 しかし、会場内に入ると空気が一変。コンコースや客席が日陰だったということもあるが、各所に取り付けられた大型送風機(気流創出ファン)のおかげで気温ほど暑さを感じなかった。もちろんマスクを着用していたが、それでも暑さは気にならなかった。

 今回は無観客だったので、本番のように観客が大勢入ると暑さをどう感じるかまではテストすることができなかった。グラウンドレベルでは日差しもあり、スタンドほど風も吹いていないため、選手にとっては過酷な条件には変わりは無い。しかし、観客目線でいえば暑さへの抵抗感は少しだけ薄れた。

 もう一つ。あまり注目されないが、音響の良さも国立競技場の特徴だと感じた。とかく陸上競技場では大会運営のアナウンスや勝利後のインタビューなどが聞きづらい、もしくは反響しすぎて何を言っているのかわからない会場が多いことにストレスに感じていたが、国立はとてもクリアに聞き取れた。これは何時間も観戦する観客にとってはうれしい配慮だ。

 現時点では来年の東京五輪開催はコロナ禍もあって100%とは言い難いが、延期の1年間で選手、観客目線で会場のテストができたのは大きかったと思う。ただ、世界陸連会長で国際オリンピック委員会(IOC)の委員も務めるセバスチャン・コー氏(63=英国)は、感染拡大が収まらずに東京五輪が行われない場合、陸上の代替イベントを検討する可能性についても言及していた。

 猛暑でもある程度の暑さ対策の効果を示した新国立。国内外のトップ選手がこの会場の性能をフル活用して好記録を打ち出す姿は果たして見られるのだろうか。(記者コラム・河西 崇)
 

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