遊びじゃない 都筑有夢路 原点は中学時代の悔しさ レジャー脱却 競技イメージ一新のため

[ 2020年8月19日 05:30 ]

2020+1 DREAMS

波に対し直角にサーフボードを当て込む都筑(撮影・会津 智海)
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 【THE STORY 飛躍の秘密】東京五輪新競技のサーフィンで、昨年ブレークした女子の都筑有夢路(あむろ、19)。都筑はコロナ禍で集中したサーファー批判に心を痛めた。サーフィンをスポーツとして捉えてもらえない葛藤も抱えている。世界最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)に、日本女子として初めてフル参戦を決めたニューヒロインが1年延期となった五輪とサーフィンの未来への思いを語った。

 トップサーファーなら誰もが目指す最高峰の舞台がある。「CT」。日本女子として初めて参戦予定だった都筑のデビューは、新型コロナウイルスの影響で今季はお預けになった。緊急事態宣言発令中は海に入りたい気持ちをこらえ、自宅でトレーニングに励んだ。一方、ニュースでは外出自粛が求められる状況で海に繰り出す一部のサーファーたちがフォーカスされ、批判が集まった。

 「ちょっと悲しかったです。ああいうことがあると、またイメージが悪くなる感じがする。選手は全員海での練習を自粛していたにもかかわらず、トップアスリートとして見本になれなかったのは悔しいです」

 サーフィンをスポーツとして見てほしい――。これが都筑の願いだ。中学生の時には悲しい経験もした。潮焼けで茶髪になって登校した際、先生に「染めてこい」と注意された。「見た目はチャラいけど、頑張っているのはみんなと同じ。他のスポーツでマッチョになるのと一緒なのに、先生なんでそんなこと言うのと思った」。サッカーや野球では周囲から応援があるのに、サーフィンはレジャーとして認識され「頑張れ」と声を掛けられることは多くなかった。

 東京五輪でサーフィンが新競技として採用されたことで、イメージが一新されることを期待している。「五輪はチャンスの場。どのスポーツも人を感動させられることは同じだと思う。日本人や自分が活躍して、サーフィンもそういうふうに見てほしい」。固定概念がなくなることで競技の普及率も上がり、日本のサーフィンのレベルは高くなる。そう信じて1年延期された五輪開催を待っている。

 都筑がサーフィン界にその名をとどろかせたのは1年前。昨年9月にスペインで行われたCTの参戦権を争う予選リーグ(QS)最高ランク大会、「アバンカ・ガリシアクラシックプロ」で日本女子として初の優勝を成し遂げた。QSランクは48位から8位に浮上した。「ただヒート(試合)をパスしただけで、終わったのか分からなかった。お母さんが泣いているのを見て、本当に優勝したんだってもらい泣きした」と振り返る。都筑の涙には、これまで苦渋を味わった日々の思いが込められていた。

 運動神経は抜群だった。幼少期には風呂おけに乗って湯船に浮かび、小学生の時には神奈川県藤沢市で陸上50メートルの記録を保持。兄・百斗の影響で小学5年から本格的に競技を開始した。他の選手に比べ、始めた時期は遅いが「最初からスッと乗れて、横に滑る程度にはできた」と身体能力の高さを発揮し、みるみる成長。中学2年でプロ転向し、翌年にはさらに質のいい波を求めて兄と拠点を藤沢市から千葉県一宮町に移し技を磨いてきた。

 同時期から正式に海外転戦を始めたが、成績は振るわなかった。練習では存在感をアピールできるものの、国内試合でも思うような結果が出ない。初戦敗退も多かった。

 「あむちゃん(都筑のあだ名)、サーフィンはうまいのにね」。高校入学後、耳に入った言葉が心に突き刺さった。「このまま終わるのはダサくね?って。同世代の子たちがたくさん勝っているのを見て、自分もそうなりたいと思った」。スイッチが入った。

 これまで都筑は波を見て試合中に指示するコーチを付けておらず、自分の力で波を読む経験は人一倍積んできていた。「波を読むコツは、今まで負け続けてきたから身に付けられた」ことが、19年の躍進につながっている。CT昇格まであと1ランクに迫る8位で昨季を終えたが、シード権を持つ米国選手が東京五輪専念のために20年のCT出場を辞退。「努力してきたからつかめた運」。繰り上がりで参戦を決めた。

 海面を滑るサーフボードが、鮮やかなラインを描く。パワフルでありながら、技と技のつなぎ目まで意識した流れるようなサーフィンが都筑の持ち味だ。

 「ワールドタイトルを獲れるサーフィンをしていたら、五輪でも金メダルが獲れる」

 目標はあくまでもCT年間1位に輝き、ワールドタイトルを手に入れること。目先の結果にとらわれず、未来の栄光を狙う“都筑スタイル”を貫く。

 ▽サーフィン東京五輪代表選考 代表は男女最大2人ずつ。19年CTの成績で男子の五十嵐カノア(22=木下グループ)が出場権を獲得。村上舜(23)と女子の松田詩野(18)は条件付き出場権を得ている。残りの枠は21年5月のワールドゲームズ(WG=世界選手権に相当)の成績を加味して決める。上記3人と都筑は、すでにWGへの出場が決まっている。都筑はWGで上位7人に入れば、五輪代表入りする。

 ▽チャンピオンシップツアー(CT) 世界サーフリーグ(WSL)が組織する世界最高峰のプロサーフィンツアー。女子は毎年18人で争われ、最終ランク上位10人が翌年のCTに残留できる。また、予選リーグであるQS(クオリファイングシリーズ)最終ランク上位6人などが翌年のCT参加資格を得ることができる。当落線上のCT選手がQSランクにいる場合もあり、都筑がCTに入るには昨季7位以内に入る必要があった。

 ◆都筑 有夢路(つづき・あむろ)2001年(平13)4月5日生まれ、埼玉県所沢市出身の19歳。4歳の時に神奈川県藤沢市に引っ越し、小学5年から2歳上で現在プロの兄・百斗の影響でサーフィンを本格的に始める。15歳からプロ入りし、16歳から海外ツアーを転戦。19年に最高ランクのQS10000を制し、その後の世界ジュニアで日本人初優勝。日本女子初のCT入りを果たした。趣味は映画観賞。1メートル58、55キロ。

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