青学大陸上部・原監督が提言 ウィズコロナ時代の陸上 箱根駅伝は「やらないといけない」

[ 2020年8月19日 05:30 ]

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青学大陸上部の原監督
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 【THE OPINION 明日への提言】新型コロナウイルス感染拡大により駅伝、マラソンの中止が相次ぐ中、青学大陸上部の原晋監督(53)が取材に応じ、「ウィズコロナ」時代の陸上、そして東京五輪の在り方について提言した。すでに「学生三大駅伝」の一つ、出雲駅伝は中止となったが11月の全日本大学駅伝、来年正月の箱根駅伝は開催可能と自信を示す。東京五輪については条件付きで開催を支持している。

 コロナ禍でスポーツの感染対策などが問われる昨今。出雲駅伝中止の一報を受けた原監督は開口一番、今後のロードレースの在り方について言及した。

 「出雲駅伝の中止は単刀直入に言って残念。出雲市はコロナ禍でボランティアの人数が足りないという理由だが、いくらでも簡素化できたはずだ。極端にいえば人を減らしてスタート、ゴールだけタイムを測ればいいし、選手は道路中央部を走って沿道から距離をとるなど対策はある。余裕のない時でも最低限で運営できるやり方は絶対ある。100%安全確保を言いだしたら大会はできない」

 ロードレースで最も課題となるのが沿道に詰めかける観衆だが、屋外で行う駅伝やマラソンは3密状態には当たらずに開催可能と主張する。

 「そもそも沿道は3密じゃない。マスクをして大声を張り上げなければ問題ない。観客の応援もせいぜい20~30分の世界で、そこを規制するのは過剰。満員電車よりも過密じゃないし、満員電車でクラスターが発生した報告はないでしょ」

 トップ選手が参加する大会と市民大会の開催可否を同じ基準で判断することにも疑問の声を上げる。個人を追跡可能で健康状態も把握できるトップ選手の大会は基本的に対策を万全にすれば開催はできるという。

 「不特定多数の参加者が出場する市民マラソンは確かに怖い。出場者の動向を把握できるトップ選手の大会と何万人規模の市民大会は判断基準を分けた方がいい。世間では緊急事態宣言後にフェーズを変えながら経済活動を再開した。それと同じように、トップ選手の大会と市民大会を同じガイドラインでくくるのではなく、それぞれのカテゴリーに応じたガイドラインを適用して開催していくべきだ」

 これらを踏まえて原監督は全日本大学駅伝、そして来年正月のビッグイベント箱根駅伝の開催は十分可能だと自信を見せる。

 「できる、できない関係なく、やらないといけない。どこの誰かは把握しているし健康状態も分かっている。PCR検査を出場要件にしてもいい。PCR検査を身近な存在にしていくべきだし、補助員もボランティアもそれが受けられるようにしていくべき」

 延期となった東京五輪についてはワクチン開発を前提条件とした上で、来年の開催に前向きな姿勢を示した。

 「ウイルスの姿が見えてきた中で、来年の開催条件はワクチン開発だと思う。インフルエンザだってワクチンがあっても残念ながら死亡するケースはある。重症化しないワクチンがあれば感染者数はあまり気にしなくて良いと思うが、受け入れ態勢として医療体制確保は絶対条件だ」

 一方で憂慮しているのは大会中止が一部の声に屈して決定される場合がある、現在の風潮だという。これについて原監督は教育者としての観点からも警鐘を鳴らす。

 「開催反対の声を意識して、中止の方がノーリスクだからそうする判断もある。それは将来、若者がリスクがあればやめようというネガティブ思考にもつながる。五輪だけでなく国内大会にもいえるが、同調圧力に負けてやらない方がいいという風潮は食い止めたい。100%安全確保しないと開催できないというように感じているけどそんなことはない。良い意味での適当さが今の日本には必要だと思っている」

 ◆原 晋(はら・すすむ)1967年(昭42)3月8日生まれ、広島県三原市出身の53歳。中国電力で選手として活動したが、27歳で現役を引退。04年に青学大陸上部長距離ブロック監督に就任し、12年出雲駅伝で学生三大駅伝を初制覇。箱根駅伝は15年に初優勝に導き、計5度優勝。19年から同大地球社会共生学部教授も務める。

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