信成氏、涙目で女性コーチをモラハラ提訴 損害賠償請求額は1100万円

[ 2019年11月19日 05:30 ]

大阪地裁に提訴し、涙ながらに記者会見する織田信成氏
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 10年バンクーバー五輪フィギュアスケート男子代表で、プロスケーターの織田信成氏(32)が18日、モラルハラスメント(言葉や態度での嫌がらせ)を受けて関大アイススケート部の監督を辞任に追い込まれ精神的苦痛を受けたとして、同部の浜田美栄コーチ(60)に1100万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴をした。大阪市内で会見し、涙を浮かべて被害を訴えた。

 提訴後の会見が始まって程なくして、織田氏は、声を詰まらせ、目に涙を浮かべた。ハンカチで目元を拭う場面もあった。9月まで務めた関大アイススケート部監督時代に、平昌五輪4位の宮原、昨季のGPファイナル女王の紀平を育てた浜田コーチからモラハラを受けていたことを明かした。

 旧知の人物を訴えるまでになった理由を、「フィギュア界の悪弊へ一石を投じる思い」とし、「学生や選手がよりよい健全な環境でさらに練習できるようにという気持ちで提訴をした」と語った。

 訴状などによると、監督就任直前の17年2月、危険と感じた練習を注意した後に浜田コーチに激高され、3月頃から無視されるなどのハラスメント行為を受けた。「監督になってから偉そうになった」などの陰口も言われるようになった。

 関係が悪化したのは、今年1月。学業優先の練習時間に変更するように提案した後からモラハラがエスカレート。高圧的な態度などに恐怖感を覚え、目まいや震え、発汗が増えるなどの体調が悪化し、3月末に8日間、高熱で入院した。

 退院後、学業成績不振者を減らすために部則を変更したところ、嫌がらせを受け、精神的苦痛により5月からリンクに行けなくなった。「僕自身そこまで精神的に弱い人間と思っていないので、そういう人でもこうなってしまう」と訴えた。

 関大側にも不信感を募らせている。7月にモラハラの調査を依頼したものの、音沙汰なし。辞任した後の10月に代理人を通じて「調査をしていなかった」という報告を受けたという。関大のハラスメント防止ガイドラインに基づき、調査と救済措置を求める申し立てを大学にしたことも明らかにした。

 シーズンまっただ中の“お家騒動”。指導者として「非常に残念」と厳粛に受け止めた。選手への影響も「それはないんじゃないかなと思う」と語るにとどめたが、一方的な主張はかつての教え子への影響も懸念される。

 ◆織田 信成(おだ・のぶなり)1987年(昭62)3月25日生まれ、大阪府高槻市出身の32歳。7歳からスケートを始め、05年世界ジュニア選手権で優勝。06年トリノ五輪は全日本選手権で2位に入りながら出場できなかったが、10年バンクーバー五輪では7位入賞。4度出場の世界選手権は06年4位が最高。引退後はプロスケーターやタレントとして活動。17年4月に関大スケート部監督に就任。


 ▼浜田美栄コーチ まだ訴状が届いていないので、詳細は分かりかねます。シーズン中であり、生徒の大事な大会も控えていますので、現時点でのコメントは差し控えさせていただきます。

 ▽モラルハラスメント 言葉、態度、文書などで、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、精神的苦痛を与えること。また、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪化させること。職権などの立場の優位性を利用して肉体的、精神的な圧力を加えるパワーハラスメントに対し、モラハラは同僚や同じ立場の人間から行われる場合も含まれる。直接的な暴力は含まない。



《織田信成氏の主張》
 ★17年2月ごろ ルール違反の「5人一斉で高速の八の字滑走」をさせた浜田コーチに注意→激高され、「あんたの考え方は間違っている」などと反論される

 ★同3月ごろ あいさつしても無視されたり、近づくと露骨に嫌がるそぶりをされた

 ★同4月ごろ 「監督になってから偉そうになった」「勝手に物事を決めている」などと陰口や事実と異なる噂の流布

 ★19年1月 小学生から大学生まで「授業優先」の練習時間に変更するように求める→嫌がらせやハラスメントが再発し高圧的態度を取られる

 ★同4月 「練習時間変更の評判が悪い」と怒鳴りつけられる→食欲減退、アルコール摂取量が増える

 ★同 「文武両道」を実現するために部則を変更→5月頃からハラスメント行為がエスカレート



 《関大コメント発表「この時期に大変…残念」》
 織田氏はこの日、関大に対して、「(1)同大学のガイドラインに沿ったハラスメントの調査の実施、(2)自身の救済措置」を求めたことも明らかにした。

 一方、大学側は提訴を受けて、「提訴の内容については承知しておらず、コメントは差し控える。現在、アイススケート競技がシーズンに入り、多くの選手が、練習とその成果の披歴に懸命に取り組んでいるこの時期に提訴されたことは大変残念だ」とコメントを発表した。

 この問題は、9月9日に関大が織田氏の監督退任を発表したことが発端。後に、織田氏がブログで「モラハラ行為があった」と反論していた。その後、関大は退任した理由を「(織田の)所属事務所と十分に協議の上」で決めたとのコメントを発表していた。



 《セクハラ&パワハラに比べ実態捉えにくく低い認知度》
 織田氏の提訴について、若狭勝弁護士は「モラハラは認知度が低い。1年以上はかかる」と長期戦を予想した。同弁護士は「認知されているセクハラ、パワハラよりも(実態が)捉えにくい。道徳、価値観の問題がある」と指摘。判例の多いパワハラ、セクハラは判断基準、尺度があり、地方自治体などでも明確に示されている場合がある。一方で、モラルは人や時代によって変わり、直接的な暴力でなく精神的苦痛が占める。同弁護士は「ビジュアルではない(目に見えない)。だから、提訴しても有利ではない」と語った。

 過去の訴訟例が少ないモラハラでの訴訟で、織田氏側が求めた損害賠償は1100万円。同弁護士は「モラハラは根付いてなく、簡単ではない。一般的に損害賠償金額は高めに設定するが、1100万円の設定はかなり高い」とした上で「一石を投じたのではないか」と今後の訴訟に影響を及ぼす可能性を示唆した。

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