羽生、独壇場V 新境地で自己新322・59点「自分に勝てたな」

[ 2019年10月28日 05:30 ]

フィギュアスケートGPシリーズ第2戦  スケートカナダ最終日 ( 2019年10月27日    カナダ・ケロウナ )

演伎冒頭の4回転ループからスクワッドイーグルに入る羽生(撮影・長久保 豊)
Photo By スポニチ

 羽生流で新境地だ。男子フリーが行われ、14年ソチ、18年平昌五輪連覇の羽生結弦(24=ANA)が212・99点を叩き出し、2位と59・82点差の合計322・59点でぶっちぎりの初優勝を飾った。ともに世界最高得点に肉薄する自己最高得点。単発の新技こそ封印したが、世界初のコンビネーション技を決めるなど総合力を存分に発揮した。次戦は11月22日開幕の第6戦NHK杯(北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ)に出場する。

 これが羽生の切り開いた新境地だ。難関プログラム「Origin」を全身全霊で演じ切ると、しばらくうずくまった。氷を手でなで、呼吸を整える。片膝立ちから上体を起こし、吠えた。「勝ったーーっ!」。王者復活ののろしを上げた。

 「久しぶりに心の中から自分に勝てたなと思える演技でした。SP、フリーともに(高得点で)そろうことが長い間なかった。そのこと自体がうれしかった」

 魂を込めた4分間。今できる羽生の全てが詰まっていた。冒頭の4回転ループをこらえて着氷し、続く4回転サルコーをクリーンに成功させた。最大の見せ場は後半のコンビネーション。4回転トーループ―1回転オイラーに、通常のサルコーではなく基礎点の高いフリップを加えた3連続ジャンプに変更。世界初となる連続技を完璧に決めた。4・07点の加点もつき、異次元の20・90点がついた。

 総合力で未知の領域にたどり着いた。ジャンプ、ステップ、スピン。羽生の卓越した技術の総和が、フリー、合計での自己最高得点となった。今季初戦オータム・クラシックからの1カ月。高難度ルッツ、アクセルの挑戦でなく、フリーのブラッシュアップに時間を割き、演技にマイナーチェンジを加えた。世界初の3連続ジャンプも「少しでも基礎点を取れるように。戦いに必要なものとして使いたい」と工夫を凝らした。その選択が正しいことを証明した。

 これでGP通算11勝目。4度目でスケートカナダ初戴冠となった。ルッツ、アクセルがなくても、ネーサン・チェン(米国)が3月の世界選手権でマークした合計の世界最高323・42点に0・83点差に肉薄。だが、まだ伸びしろを感じている。「まだ30%とか20%。最終的には、このプログラムに4回転アクセルを入れたい、ルッツを入れたいと思うかもしれない」。五輪連覇の24歳は、青写真を描いた。

 「今、壁が見えている。その壁を乗り越えたら、もっといい景色が見えるんじゃないかなと思って。もがこうと思います」。羽生はまだまだ見る者の想像の先を行く。

続きを表示

この記事のフォト

2019年10月28日のニュース