ささきしょうこ 病と向き合い「あと3年ゴルフを頑張る」 今季の目標は「笑顔でプレーを」

[ 2019年2月25日 15:34 ]

シーズン開幕へ向けて土佐CCで合宿中のささきしょうこ
Photo By スポニチ

 日本女子プロゴルフツアーで昨季、スタンレーレディースなど2勝を挙げて躍進したささきしょうこ(22=日本触媒)は今季のツアー第2戦、ヨコハマタイヤPRGRカップの舞台でもある土佐カントリークラブで開幕前恒例の高知合宿を行った。さらなる飛躍を目指すささきに今季の目標、将来の夢などについてインタビューした。

 ――2018年シーズンを振り返ると。

 「最終的にツアー2勝できて、賞金ランクも16位に入れたので、いい一年で締めくくることができたと思います。でも全体的に見ると、もがいた時期の方が長かったので、9月くらいからちょっとご褒美がもらえたかなと思っています」

 ――子どものころの夢として将来は海外で活躍したいというのがありましたが、今後のプランは。

 「病気(パニック障害、自律神経失調症)の分、飛行機とかがダメなので。(海外)メジャーでは戦ってみたいというのはありますけど、日本で複数回、勝つということも難しいことです。今はまずは日本でという気持ちでいます」

 ――2019年はどのようなシーズンにしたい。

 「(オフに)車の免許を取りました。自分一人では無理なことも多いんですけど、ちょっとずつ一人でできることを増やしていきたいと思っています。人間として成長したいから。その成長がゴルフにもつながると思っています。女子プロゴルフの世界は40歳を過ぎると厳しい。人生を考えると、プロゴルファーではない時間の方が長いじゃないですか。一人の女性として成長したら変われるかな。大人になって自立していけたら変わっていけるかなと思っています。病気(パニック障害、自律神経失調症)になった時にゴルフしかないと自分を追い込んでしまって、ツアープレーヤーでいる意味が分からなくなって、ゴルフを止めたくなりました。そうした時にプロゴルファーでいる短い時間を楽しもう。自分がゴルフを楽しんでいる姿を、私、頑張ってるよっていう姿をファンの方に見てもらおうと思うようにしました。

今シーズンの第一の目標はもちろんシード確保ですけど、少しでも笑顔でプレーする時間が多ければなって思っています。去年まではコース上でしんどいことが多かったこともあって、あんまりいい顔をしてプレーできていませんでした。ギャラリーの方から“表情が怖い”という声が聞こえてきたりもしていました。今シーズンは“あの子、楽しそうやな”って言っていただけるようなプレーができたらと思っています」

 ――シーズンオフに自動車の運転免許証を取ったという話がありましたが。

 「合宿で2週間、すごく健康的な生活をしました。基本的には年下の子が多かったんですけど、同い年の子もいて、全然、ゴルフじゃない話をするのはすごく楽しくて。最終的には自分がプロゴルファーだということがバレてしまったんですけど、一人の友だちとして接してもらえたのがすごく新鮮でした。周囲のみんなには一回は落ちるだろうねって言われてたんですけど、全部一発合格でした」

 ――昨シーズンを振り返って、もがいた時期の方が長かったという話もありました。そのもがいた時期をどのようにして克服したのでしょう。

 「(優勝した10月の)スタンレー(レディース)の時は病気がひどくて。一昨年のオフから精神安定剤を飲み始めて、少しずつ発作が出にくくなってはいたんですが、めまいやひどい頭痛が出ていたりはしていたので、強い頭痛の薬を飲んだりして、体の変化を無理矢理抑えるという形で、発作を鎮めながらツアーに出ていました。去年の4月くらいまではそうした症状も何とか薬で抑えていたんですが、4月を過ぎると、薬が効かなくなって、大量摂取するようになってしまって。逆に今度は薬を大量に飲みすぎてしまったせいなのか、すごい嫌な夢を見たり、変な声が聞こえたり、変なものが見えてしまったり、すごい苦しくて、8月になると、人前に出られなくなって、スタート10分前になってもクラブハウスのロッカーから出られなくて、薬を飲んで何とか涙だけ止めてティーグラウンドに立ったりというのが多々あって。それで9月の頭になってどうせ一緒だったら一旦、全部薬を止めようって決めました。薬を止めて初めてトップ10入り(10位)したのが(9月第3週の)マンシングウェア(レディース東海クラシック)でした。首位で迎えた最終日は手が震えてどうにもならなくて……。でも薬を飲まなくても人前に出ることができるというのが分かった、それだけでうれしくて。その分、夜とかに発作はひどかったんですけど、試合でゴルフができたのがよかったなあって思って」

 「先輩方にも支えていただきました。福嶋浩子さん、大竹エイカさん、山本薫里さん……こういうメンタルの病気って自分からはなかなか言えないんですけど、私がファンの方から見えないところでバタンと倒れてしまったりした姿を見て、先輩方が声を掛けてくださって。いろいろ相談に乗っていただきました。その方々といっしょにいさせていただければ、病気のことを隠す必要もなくてすごい楽になりました。そうした中で、私自身、去年、とりあえずあと3年、ゴルフを頑張ろうって決めたんです。その3年が終わったらまた考えようって。その代わりこの3年間は悔いのないように頑張ろうと。そういう気持ちになれたのも先輩方のおかげです。素晴らしい先輩方に恵まれました」

 ――病気に関して今の状況は。

 「う〜ん、どこで気持ちが落ちてしまうのか、パターンとして分かってきているので落ちそうになった時は自分で調整しています。たまに分かってないパターンがくる時はありますけど、ホントにひどい時以外は薬は飲んでいません。この病気は一生ついてくるものだと思います。みなさんが治ったというのは気持ちが落ちてしまうパターンが自分で分かったということだと思うんです。この病気を持っていない人のようなことにはならないと思っています。でも去年に比べれば、すごい楽です、自分で何とかコントロールできることの方が増えてきていますから。シーズンに入ると、また、シードのカベというのがあって怖いですけど、今は気持ちが落ちるのを前提にして考えられるので」

 ――プロゴルファーとして以外の夢はありますか。

 「この病気になった時からずっと自分でゴルフのレッスン場をつくりたいなと思っています。そこでジュニアの子たちと触れ合いたいなって。今のジュニアの中にはゴルフの成績にこだわりすぎじゃないかなと思う子もいます。ゴルフにつぶされてほしくない。私と同じ道をたどってほしくないですから」

 「それからこういう病気を抱えている方々に自分の実体験を話せるようになりたいなと思っています。この病気になったのも何かの縁だと思うので、この病気になったことを生かせる仕事をできたらいいなと思います。病気のことを分かってくれる人を一人でも多く見つけられれば気持ちも楽になります。私が実際にやってみてよくなったことを伝えていければ。もう少し有名にならないと誰も私の話を聞いてくれないと思うので、これからも頑張りたいと思います」

 ◆ささき しょうこ(本名・佐々木笙子)1996年(平8)6月8日生まれの22歳。兵庫県加古川市出身。9歳からゴルフを始める。師匠は岡本綾子らを育てた岡本昭重プロ。クラーク記念国際高卒。2015年のプロテストに一発合格。翌2016年には大東建託・いい部屋ネットレディースでツアー初優勝を果たし、LPGA新人賞、日本プロスポーツ新人賞を受賞。ツアー通算3勝。趣味は寝ることと読書。生まれ故郷の加古川市で観光大使も務める。1メートル70、65キロ。血液型O。日本触媒所属。

続きを表示

この記事のフォト

2019年2月25日のニュース