大迫「マラソンは一つの作品」 結果よりプロセスに価値がある

[ 2019年1月31日 11:30 ]

スポニチ本紙のインタビューに答える大迫(撮影・久冨木 修)
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 男子マラソン日本記録保持者で、3月3日の東京マラソンにエントリーした大迫傑(27=ナイキ)がインタビューに応じ、マラソンへの独自の世界観を語った。マラソンデビュー戦から2時間5分50秒の日本記録を達成した18年シカゴマラソンを振り返り、プロセスを大事にするトップランナーは、レースを「作品」と表現した。

 2018年10月7日、日本人が初めてマラソンで2時間5分台に突入した。日本最速のマラソンランナー“いだてん”大迫は快走したシカゴだけでなく、これまでの2レースも合わせ「それぞれのマラソンで成長できた。どのレースのプロセスもシカゴと同じくらい価値がある。ちょっと練習が駄目なときもあったが、トータルで価値があるし、優劣は付けられない。僕のマラソンは一つ一つが完結している。マラソンは一つの作品です」と独特の表現で語る。

 マラソンのデビュー戦となった17年ボストンは同年の丸亀ハーフからの準備期間も含めたプロセスがはまったレースだという。

 「(ボストンは)再現が可能な結果だった。プロセスも含めてどうやって出したか確実に見えるんです。マラソンはトラックよりはそういう要素が多いので、それが燃焼する楽しみでもあります。その年の丸亀ハーフが良かったので、次という感じでした。準備期間だったら5カ月間。丸亀からボストンにつなげる気はなかったけど結果的にそうなりました」

 結果よりも準備の方が価値がある。過程を楽しむのも大迫のマラソンに対する矜持(きょうじ)だという。

 「周囲の人にとって一番価値があるのは42・195キロを走る時間ですけど、僕はそこまでの4、5カ月間の方が価値がある。42・195キロを評価するのは当然だと思うし、それを否定することはないけど、違う視点を持っても良いんじゃないかとも考えています」

 ストイックにマラソンに打ち込める自分自身をマラソン向きの性格と自己分析している。

 「強みはマラソンに必要なメンタルの部分。年中ストイックというわけではないけど、陸上に必要なら他を削っていける。メニューを作るのも、これだけ頑張ったというのも、妥協なく5カ月間過ごしたというのも、それだけで価値がある。きついことはきついんですけどそこも含めてプロセスを楽しんでいる。準備を含めて作品だと思います」

 米オレゴン州の“アトリエ”で次戦に向けて己を磨き続ける大迫が、次はどんな色を加えた作品をマラソンファンに見せてくれるのか。

 「何か目的を持って色を加えるというのではなく、その場で動く、その場でやってみる、動いてみる。まずは次の東京マラソンに向けてという感じです。その場、その場でやっていきたいなと思っています。一年一年のスパンで考えていないので分からないが、18年は大きな年になった。凄く成長できた年です。でも、もっと大きな年は待っていると思う」

 ▽東京五輪マラソン代表への道 19年9月15日に行われる男女日本代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で男女各2人が決定する。代表2人のうち1人は優勝者で、もう1人はMGC2位か3位のうち、派遣設定記録(男子2時間5分30秒、女子2時間21分0秒)を過去に突破した選手の最上位。該当者がいない場合はMGC2位となる。残り1枠は19年冬から20年春にかけて行われる男子3大会(福岡国際、東京、びわ湖毎日)、女子3大会(さいたま国際、大阪国際、名古屋ウィメンズ)の「MGCファイナルチャレンジ」で派遣設定記録(19年5月発表予定)を突破した記録上位の選手が全レース終了後に内定。記録突破選手がいなかった場合、MGC2位または3位の選手が内定する。

 ◆大迫 傑(おおさこ・すぐる)1991年(平3)5月23日生まれ、東京都町田市出身の27歳。町田市立金井中で本格的に陸上を始め、長野・佐久長聖高2年時に全国高校駅伝優勝。早大では箱根駅伝で1、2年時に1区区間賞、3年時は3区2位、4年時は1区5位。3000メートル7分40秒09、5000メートル13分8秒40は日本記録。昨年10月のシカゴマラソンで2時間5分50秒の日本記録を樹立した。1メートル70、52キロ。

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