白井 床でH難度新技決めた!「シライ3」申請へ

[ 2015年12月13日 05:30 ]

伸身リ・ジョンソンを成功させた白井健三。その様子を報道陣にまじって内村(後列右端)がスマホで撮影

体操 豊田国際競技会第1日

(12月12日 愛知県豊田市総合体育館)
 “ひねり王子”が、また新技を決めた。男子床運動の13、15年世界選手権金メダリスト・白井健三(19=日体大)が同種目で、男子では最高のH難度に相当する「伸身リ・ジョンソン」(後方伸身2回宙返り3回ひねり)に挑戦。ラインオーバーはしたものの技自体は成功し、15・700点で優勝した。同種目で自身の名がつく技を既に2つ保持しており「シライ3」と命名される見通し。3つの大技で、16年リオデジャネイロ五輪の金メダルも決まりだ。

 “ひねり王子”に限界なんて存在しない。白井が、また一つ体操の歴史に名を刻んだ。今秋の世界選手権など、これまで使っていたG難度「リ・ジョンソン」を、試合で初めて伸身バージョンに。冒頭、男子では最高のH難度に相当する新技に挑んだ。伸身姿勢、宙返り、ひねりも完璧だ。「高さが出た。今までできたことがないくらい、できてしまった」と着地でラインオーバーしたのはご愛きょう。演技後は手を合わせて謝罪のしぐさを見せたが、次の瞬間には力強く拳を突き上げた。

 日本協会もすぐに動いた。この日、国際連盟(FIG)に新技申請すると発表。来年2月に予定されているFIG技術委員会で認定されれば「シライ3」と命名される見通しになった。体操では、主要国際大会で初めて成功させた選手の名前を技に命名。豊田国際はFIG主管の大会でないため、申請が通らない可能性もあるが、FIGのブッチャー男子技術委員長は今大会で審判長を務める冨田洋之技術委員に対し、演技を録画するよう求めていたという。

 右アキレス腱の炎症で欠場し、会場で見守った内村航平(26=コナミスポーツ)も、白井を絶賛した。「良すぎてラインオーバーしていた。成功させてくれるところが強いなと思った。(能力を)フルに生かせる技」。内村も白井も、16年リオデジャネイロ五輪での最大目標は団体総合の金メダル。伸身リ・ジョンソンを加えることで、既にライバルを圧倒していた演技価値点(Dスコア)は7・6点から7・7点に。内村とともに、団体V奪回へのキーマンだ。

 白井は今春、日体大に入学。全体練習後の居残りでのトレーニングも欠かさず、レベルアップを図ってきた。今季最後の試合で「モチベーションを上げてみよう」と新技に挑戦し、見事に成功。床運動では既に自らの名前がついた技を2つ持っており、FIGへの申請が通れば「シライ3」と命名される。「ハイレベルな技が自分の名前になるのはうれしい」と笑った19歳は「もっと上を目指して挑んでいきたい」と意気込んだ。来年夏、3つの「シライ」で“ひねり王子”が黄金の輝きを放つ。

 ◆白井 健三(しらい・けんぞう)1996年(平8)8月24日、神奈川県横浜市生まれの19歳。両親が指導者で3歳から体操を始める。中学3年時に全日本種目別選手権の床運動で2位に入って注目を集める。13年世界選手権では床運動で金メダル。今年の世界選手権で同種目2年ぶり優勝を飾り団体金にも貢献。神奈川・岸根高出、日体大1年。1メートル62、51キロ。

 ▽白井の技 これまでに床運動では2つ自身の名がつく技を保持。床運動のフィニッシュとなる後方伸身宙返り4回ひねりの「シライ/ニュエン」と前方伸身宙返り3回ひねりの「シライ2」。跳馬では伸身ユルチェンコ3回ひねりが「シライ/キムヒフン」と命名されている。

 ▽体操の難度 かつてはAからCまでだったものが徐々に増え現在は男子がH、女子はIまで存在する。男子初のH難度は今年2月に認定された鉄棒の離れ技「コバチ2回ひねり」で、アンドレアス・ブレトシュナイダー(ドイツ)が前年の国際大会で成功した。新技に名前がつくには、通常は五輪や世界選手権、ユース五輪、W杯など主要国際大会で初めて成功した選手となることが条件になる。

続きを表示

2015年12月13日のニュース