斉藤仁さん息子「父のために」五輪金誓う 「稽古に行け」を胸に

[ 2015年8月8日 09:30 ]

柔道に懸ける思いを語る斉藤立

 今年1月に54歳で亡くなった84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪金メダリストの斉藤仁さん。引退後も指導者として数々のメダリストを育て上げ日本柔道界に貢献し続けた男の情熱は、手塩をかけて育てた息子・立(たつる=13)に受け継がれている。

 8日に放送されるTBS「バース・デイ」(午後5時~5時30分、関東ローカル)で立の柔道へ懸ける思いを特集する。立は大阪・上宮中の2年生にして身長1メートル81、体重133キロ。1メートル80だった父・仁さんを既に抜いており、小学6年生の時には小学生日本一にも輝いている期待の星だ。

 父が五輪2連覇しているだけあって、トレーニングへ懸ける思いは「オリンピック優勝するぞとか、そう思ってやってます」とキッパリ。仁さんが亡くなった今でも柔道の師匠は変わらない。毎日帰宅すると真っ先に仏壇を拝む。「オリンピックで絶対優勝するって言って、夢の中のお父さんに柔道教えてって、そういう感じです」と毎日心の中で仁さんに語りかけているという。

 小学1年生の時に立が柔道を始めて以来、父でもあり柔道の師匠でもある仁さんとともに、将来五輪で金メダルを獲ることを夢見て猛稽古を続けてきた。自宅に訓練用の畳を置き毎日稽古するだけでなく、自宅前の電柱に打ち込み、家族旅行の最中に突然稽古が始まることもあったという。

 立が小学生日本一にも輝いた13年、仁さんに胆管がんが発覚。手術ができないほど腫瘍が大きくなっていたが、治療を続けながら、時には病室内でも立への指導は続いた。今年1月、仁さんが亡くなる直前に力を振り絞って息子にかけた言葉は「稽古に行け」。最後の最後まで立が強くなることを考え続けていた父の言葉だった。

 改めて将来の金メダル獲りを強く心に刻んだ立。「父さんが教えてくれたことを無駄にしないように、恩返しをする気持ちで、お父さんが願っていたことを、お父さんが亡くなる前は、自分のためだったことを、お父さんのためにやろうと思って、絶対にオリンピック獲るぞという気持ちで頑張りたいです」。

 仁さんと生前、全国大会出場の約束をしていた。7月に臨んだ大阪府大会は個人戦では準優勝に終わったものの、団体戦で優勝し全国大会への出場を決めた。

 立が五輪の金メダル獲得を目指す戦いはまだこれから。「誰にも負けない、気持ちの強い根性のある選手になりたいと思います」。若かりし日の仁さんにそっくりな顔で、父との約束を守ることを誓った。

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