香生子1 8歳日本人最年少金メダル!「本当に最高でスッキリ」

[ 2015年8月8日 05:30 ]

女子200M平泳ぎで金メダルを獲得し、拳を突き上げて喜ぶ渡部 (AP)

水泳世界選手権第15日

(8月7日 ロシア・カザニ)
 最年少クイーンだ。女子200メートル平泳ぎは、渡部香生子(18=JSS立石)が2分21秒15で、自身初の金メダルに輝いた。18歳での優勝は13年大会の男子400メートル個人メドレーを制した瀬戸大也(21=JSS毛呂山)の19歳を抜き、世界選手権では日本人最年少。4日の200メートル個人メドレーの銀に続いて2個目のメダルを手にし、16年リオデジャネイロ五輪の出場権も獲得した。また男子200メートル平泳ぎで小関也朱篤(23=ミキハウス)は2分9秒12で5位に終わった。

 ギアを上げた。150メートルを通過した時点でトップと1秒弱の差があったが、渡部は伸びやかなストロークで波を立てた。残り25メートルで先頭に立つと、最後は2位に1秒以上の差をつける完勝劇。「優勝することができてうれしい。自分のレースをすることしか考えていなかった。(星)奈津美さんの優勝が凄く刺激になり続こうと思った」。世界選手権日本勢100個目のメダルを金で飾り、リオ五輪の出場権も獲得。プールサイドに上がると両目に涙を浮かべ「ゴールの瞬間?緊張感とかプレッシャーとかが一気に全部なくなった感じが本当に最高で、これまでにないぐらいスッキリした感じ」と振り返った。

 運命に導かれ、泳ぎ始めた。4歳の時、週に1度発熱するほど病弱だった。「周りから、スイミングは体にいい」と聞いた母・恵美子さんが、スクールに通わせるようになり「水が大好きで、風呂でもよく潜っていましたよ」。しばらくすると、笑顔が似合う丈夫な子供に育った。小5で選手コースに転向。全国大会で決勝に残り、小6で全国大会5位に入った。優勝はなかったが、小学校の卒業アルバムには「水泳選手になりたい」と夢を書き記している。

 中1の秋、右肩の腱を痛めて練習ができなくなった。完治まで1カ月間、高い湿度の室内プールで縄跳びをやり続け、体力づくり。個人メドレー、自由形、背泳ぎに力を入れてきたが、患部に負担の少ないことを理由に平泳ぎに転向した。これが吉と出た。中2の全国中学女子200メートル平泳ぎで中学記録を更新し、翌11年のジャパンオープンでは、全て中学記録で平泳ぎ3冠。準決勝で敗退したものの、ロンドン五輪まで駆け上がった。

 13年5月、現在も指導を受ける竹村吉昭コーチ(59)と出会った。リオデジャネイロ五輪を目指しての再出発。その過程で一度だけ厳しく叱られたことがある。瀬戸らと向かった昨年12月の米国合宿。ふてくされた態度に「バカヤロー!」と怒鳴り声が響いた。初カミナリに18歳はむせび泣いた。「つらい時こそ笑顔でやりなさい」。心に浮き沈みがある渡部は、この言葉に何度も救われてきた。メダルを手にした時、恩師の言葉が心に染みた。「考えとかまで変えてくれて、感謝もしているし、これからも一緒に頑張っていきたい」。1年後の金メダルへの扉は開かれている。

 ◆渡部 香生子(わたなべ・かなこ)1996年(平8)11月15日、東京都出身の18歳。4歳で水泳を始め、平泳ぎは中2から始める。平泳ぎ代表として12年ロンドン五輪に日本選手団最年少の15歳で出場。昨年はパンパシフィック選手権、仁(イン)川(チョン)アジア大会の200メートル平泳ぎで優勝。4月の日本選手権では平泳ぎ3種目と200メートル個人メドレーの4冠。早大1年、JSS立石。1メートル66、58キロ。

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