申ジエ 天国の母へささげるVトロフィー

[ 2010年11月8日 06:00 ]

優勝を決め、宮里藍(左)から祝福を受ける申ジエ

 スポニチ主催、USLPGAツアー2010ミズノクラシック~伊勢志摩~最終日は7日、三重・近鉄賢島カンツリークラブ(6506ヤード、パー72)で行われ、首位からスタートした申ジエ(22=韓国)がボギーなしの67で回り、通算18アンダーで逃げ切った。世界ランク1位の肩書通りの強さを発揮して2年ぶりに大会を制した。日米ツアーともに今季2勝目となり、日本は通算5勝目、米ツアーは通算8勝目。8日が命日の天国の母にささげる優勝を勝ち取った。ヤニ・ツエン(21=台湾)が2打差の2位で、宮里藍(25=サントリー)は日本ツアー自己ワースト(予選落ちを除く)の69位に終わった。

【最終R成績


 勝利を欲する気持ちは誰よりも強固で、優しいものだった。申ジエにとって、8日は7年前に亡くなった母・羅松淑(ナ・ソンスク)さんの命日。「あした韓国に帰るので、必ず優勝トロフィーを持って帰ると心に決めていた。一日中そのことを考えていた」。最愛の母は中学3年生の申ジエをゴルフ場まで送った帰りに交通事故に遭って命を落とした。30センチのウイニングパットを沈めた申ジエは、笑顔とともに天に向かって右手を突き上げた。
 優勝争いは同組のヤニ・ツェン、S・ルイスとのデッドヒート。ヤニ・ツェンには11番で並ばれたが、後半の2つのパー5で確実にバーディーを奪って突き放した。特に16番では先にバーディーパットを外したヤニ・ツェンのラインを参考にして、5メートルのスライスラインをねじ込んだ。ガッツポーズも飛び出し、リードを2打に広げてライバルを意気消沈させた。
 今季は6月に虫垂炎の手術を受け、その後も休養を挟みながら試合出場を続けてきた。「盲腸の手術を受けた後はみんなやせるみたいだけど、“申さんは変わらないね”と言われてちょっとショックだった」と苦笑いしつつも、シーズンが進むにつれて不安は薄れていった。5週連続出場となる今大会でも本領を発揮。最終日のフェアウエーキープ率は100%。パーオンを逃したのはわずか2ホールとショットの安定感はずば抜けていた。
 9月には韓国ツアーで通算20勝目を挙げて永久シードを獲得したばかり。今回の優勝で米ツアーの賞金ランクでは、首位の崔羅蓮と3534ドル差の2位に浮上し、2年連続の米ツアー賞金女王も手が届く位置まできた。
 シーズンは残り2試合で今週のロレーナ・オチョア招待は欠場し、母の墓前に優勝報告を済ませてから12月の最終戦に勝負を懸ける。「母に何かをお願いするとしたら妹や弟のこと。わたしはいつも試合で韓国を離れているので、彼らを見守っていてくれるように」。差し迫った自分のタイトル争いも二の次。その姿に申ジエの人柄がにじみ出ていた。

 ◆申ジエ 1988年4月28日、韓国生まれの22歳。アマチュアだった高校2年時に韓国のプロ競技で優勝。翌年にツアー本格参戦し、18歳から3年連続で韓国の賞金女王に。08年からは海外にも進出し、09年に米ツアーの賞金女王に輝いた。1メートル55、66キロ。得意クラブは1W、3W。

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